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欧州臨床腫瘍学会(ESMO)学術集会 研修ツアーレポート

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)学術集会 研修ツアーレポート(1)

2010年10月8日から12日、ミラノ(イタリア)において、欧州臨床腫瘍学会(ESMO:European Society for Medical Oncology)の第35回年次学術集会「35th ESMO Congress」が開催されました。世界100カ国以上から約1万6000人が参加し、新しい抗がん剤の臨床試験の結果等が発表されました。また、患者関係者のための「患者セミナー」も行われました。がん政策情報センターでは、本学会に参加し欧州の患者団体の活動に触れる機会として研修ツアーを実施しましたので、その模様をレポートします。

 2010年10月8日から12日、欧州臨床腫瘍学会(以下、ESMO)主催の第35回年次学術集会が、ミラノ(イタリア)にて開催されました。

 がん政策情報センターでは、学術集会の会期にあわせ最新の臨床試験の状況やがん対策の動向を学ぶことを目的とする研修ツアーを企画し、国および都道府県のがん対策推進協議会の患者関係委員の方々を対象に参加者を募集しました。たくさんのご応募の中から、海辺陽子さん(前・厚生労働省がん対策推進協議会委員)、吉田祐子さん(沖縄県がん対策推進協議会委員)、若尾直子さん(山梨県がん対策推進協議会委員)の3人が選抜メンバーとして参加することとなり、市民医療協議会の山口が同行しました。

 ESMOは1975年に創立された欧州のがん治療の専門家を中心とした学会です。世界的にも重要な学会の一つとされており、年に1度開かれる学術集会には、がん治療の専門家や研究者が世界中から集まります。学術集会では、欧州をはじめ各国で実施されている、新しい抗がん剤の臨床試験の結果が発表され、その中から新たな標準治療も生まれていきます。

ポスターを熱心に見学する参加者:欧州臨床腫瘍学会(ESMO)学術集会 研修ツアーレポート 今回参加した学術集会には世界100カ国以上から約1万6000人の参加者が集いました。発表される演題数も1600件を超えました。学術集会では、臨床試験に関する発表のみならず、がん対策についてのセッションや患者を対象としたセミナーも開催されました。医療提供者や研究者、政策立案に関わる人、患者リーダーなど、様々な立場から多岐にわたる議論が繰り広げられました。

 ここからは、研修ツアー参加者のコメントを中心に、学術集会について紹介します。

世界規模の学術集会でがんの治療や対策の最前線を知る

聴講風景:欧州臨床腫瘍学会(ESMO)学術集会 研修ツアーレポート 学術集会では、さまざまな臨床試験についての発表が数多くなされますが、その中でもとりわけ話題性の高い臨床試験の発表が行われる、最新注目演題セッション(Late-Breaking Abstract Session)を見学しました。このセッションは、数1000人が入る大きな会場で、臨床試験の成果を15分単位で発表していく形式で行われます。吉田さんは「抗がん剤を単剤で用いるより、併用して投薬することで生存率を高めようとしている研究発表が続き、標準治療が変わっていく兆しを見ることができたのは印象深かった」と言います。

 また、学術集会では、様々な合同セッションも開催されました。ESMO、欧州放射線腫瘍学(ESTRO)、欧州外科腫瘍学会(ESSO)の3つの団体の合同シンポジウムを見学した海辺さんは「大腸がんが肝転移した場合の治療について、放射線治療や外科的治療の視点からも議論し、抗がん剤治療だけにとどまらず治癒をめざした切除術につなげ、5年生存率が上がったという臨床研究の報告が特に印象的だった」と、かつては治癒が不可能とされていた進行がんに対し、がんの各分野の専門家が協力して治療にあたる集学的治療の重要性について、あらためて実感します。

 日本の学会との合同シンポジウムも開催されていました。ESMOと日本臨床腫瘍学会(JSMO)のスペシャルシンポジウムを見学した若尾さんは「イタリアと日本が同時中継方式でディスカッションし、連帯感を見た」と国際学会ならではの、国境を越えた学会の連携を目にし、特に印象に残ったそうです。

会場の入り口:欧州臨床腫瘍学会(ESMO)学術集会 研修ツアーレポート がん対策をテーマにしたセッションも見学しました。欧州のがん対策について話し合う、特別シンポジウムの「欧州におけるがん対策の格差を乗り越えて(Overcoming disparities in cancer control in Europe)」を見学した海辺さんはこう振り返ります。「欧州連合(以下、EU)は独立国の集合体であるため、政策や制度上の違いがあり、すべての国が達成可能な計画を推進することの難しさや苦悩が感じられた。しかしその状況の中でも、健康施策によるがん死亡率の減少やがん登録体制の整備、乳がんや大腸がんなどのスクリーニングの充実などにより2020年までにがんによる負担(害)を15%下げること、EUすべての国で国のがん計画を策定することなど、EU全体としての明確なプランをかかげていることが印象的だった」。

患者セミナーで欧州のがん患者アドボカシーについての情報を得る

 9日と10日には約1日半にわたって、患者セミナーが開かれました。欧州のさまざまな国のがん対策の現状や患者リーダーによるアドボカシー活動の事例などを共有することが狙いです。イタリアではがん経験者の雇用を守る法律が制定されたそうですが、その法律が雇用者にまだ十分に知られていないこと、現在はその認知度を上げるための取り組みを行っていることなども語られました。患者セミナーに参加して、吉田さんは「EU加盟国間の生活レベルや医療レベルの格差が浮き彫りになっていた。EU全体のがん対策について、さまざまな状況にある加盟国同士が連携して取り組んでいくことの難しさを思い知った。それは、各都道府県が独自のがん対策を行いつつ、日本という一つの国単位でもがん対策に取り組むことの難しさに通じるものがあるように感じた。毎年加入国が増え続けるEUの課題は私たちも参考にできると思う。数年後が楽しみだ」と振り返ります。

更新日:2011年01月06日

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