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市民と議員の条例づくり交流会議参加レポート

患者さん、立法府、行政府、医療提供者、 メディア、民間でつくるがん条例

2009年7月26日、市民と議員の条例づくり交流会議2009「市民と議会の次のステップ」が法政大学(東京都千代田区)で開催されました。その会議の分科会「市民と議員の政策条例づくり」では、「地球温暖化」「森づくり」「子どもの権利」「障害者の権利」「がん対策」――などテーマは多岐にわたりました。このなかで当機構の埴岡健一による講演「みんなでつくろう!! がん対策条例」についてご報告します。

プロセス・内容の両面に大きな転換を遂げた「がん対策基本法」

「みんなでつくろう!! がん対策条例」講演模様 がんの領域におけるがん対策基本法は、それなしでは条例のことも語れないほど、深く影響を及ぼしています。これまで医療関係の法律は、厚生労働省が主導で作成、一部医師会などの医療界の要望を反映したうえで立法府がそれを追認していました。しかし、がん対策基本法は、成立のプロセスが非常に新しく、患者さんや市民が大きな声をあげ、それを受けて立法府が基本法を作ったという流れでした。そして、この法律をもとに国のがん対策のグランドデザイン、つまり基本計画が作られました。この基本計画には大きな意味をもつ以下の文言が明記されています。 「患者及び患者団体は、がん対策において担うべき役割として、医療政策決定の場に参加し、行政機関や医療従事者と協力しつつ、がん医療を変えるとの責任や自覚を持って活動していくこと」――つまり、患者さんがサービスの受益者だけではなく、そのがん医療のあり方を考える当事者、参加者、立案者として規定されています。これは、がん対策基本法が患者さんの声を受け、超党派による議員立法として、全会一致で成立したことが大きな要因と思います。

同基本法の成立の歴史を紐解くと、そもそもの発端は2001年ごろに起こった患者さんの切実な訴えがありました。それは、「海外では使える薬がどうして日本では使えないのか」という“ドラッグラグ問題”でした。患者さんが声をあげ、署名活動や請願活動を行い、政府に陳情するという動きがあり、それをメディアが取り上げ、テレビ番組で報道されるなどして世論が高まっていきました。05年5月頃には、患者さんの中にも「がん対策の法律が必要」ということが明確に意識されてきました。それまでは「自分たちはこういう問題に遭遇しているので、ここを直してください」という各論的な活動にとどまっていたのですが、次第に「全体を決める基本法を作ってください」というように要望が変わっていったのです。そして、06年6月には法案を提出、国会で法案が俎上に上り、紆余曲折を経た後、がん対策基本法は与党・野党の賛成のもと成立しました。故山本孝史議員ががんを告白したことも大きく影響しています。山本さんが対策を訴えたスピーチが、与野党を超えて感動を呼び「ひとつこれはやろうじゃないか」という機運が全体で高まり、超党派かつ全会一致で成立しました。

地域特性により異なる条例成立のプロセス

がん条例の全国制定状況の概要について がん条例を制定しているのは、2009年7月現在で5県2市です。また、条例はないものの制定に向けて動き始めている都道府県も多く存在していると聞いています。条例成立過程における、地域の主なステークホルダー(患者さん、立法府、行政府、医療提供者、メディア、民間)の関与の仕方について各事例を紹介します。

■島根県の事例

島根県のがん対策は全国的に有名です。03年以前に患者さんが県議会に条例制定の請願を行い、署名を提出しました。その後、請願書が採択され、島根県議連会長を中心とした、議員提案によるがん条例案ができ、06年9月に成立しました。成立するまでの間、患者さんの断続的な後押しがあり、それを政治家が受けとめ、メディアはこの動きを報道することで側面的な支援を行いました。成立後、県のがん対策予算は2倍以上に増えました。また、がん対策基金の募金も始まり、地元企業が2億円を積み立て、基金が設立されました。さらに市民が寄付によりお金を積み上げています。

■高知県の事例

患者さんが一貫して中心的役割を果たしています。まず、患者団体ができ、請願書を提出し、その請願書が採択され、条例が成立しました。この患者団体は、患者家族の方と主治医が一緒につくったのですが、この患者団体に入られた患者家族の方が、がん条例の草案を作られ、提出しました。それを高知県県議会の議員が受けとめ、条例制定の機運が高まりました。

条例が成立したのは、この草案を作られた患者家族の方がご家族を亡くされた後ですが、亡くされた後も条例を再提案しました。この熱意により県議会が動き、予定よりは遅れたものの年明けに条例が成立しました。このような経緯があり、条例成立後も患者相談の仕組みができ、その活動に県が予算をつけて患者団体に委託するというような形で地域ぐるみの対策が進んでいます。

■長崎県の事例

政治家主導、県議会主導が特徴的です。党派の異なる4人の女性議員が、共同でがん条例に取り組みました。その取り組みの間、1人の方にがんが発見されました。そのことが、「条例を必ず通す」という活力に転じ、成立させていくこととなりました。

■愛媛県の事例

まだ成立していませんが、成立に向けた経緯をご紹介します。他県の条例成立に刺激を受け、愛媛県でも条例を作ろうという動きが起きました。きっかけは、患者団体の設立です。この患者団体はまだ設立から日は浅いのですが、活発な活動をしており、地域でイベントの開催を通して、いろいろな意見交換会をしていました。この中で、「愛媛にも県議会発、議員発条例を作ろう」という声があがったことを受け、それを県議会に提案したところ多くの賛同を得ました。46人中45人の県議会議員が議連に入り、条例づくりに取り組もうという雰囲気になっています。また、愛媛県では、地元の財界や医療提供者、メディアや行政を早期から巻き込み、患者さんと議会が中心になって条例づくりを推進しているのが特徴です。

六位一体での条例づくりが、成功への近道

患者さんと立法府、各都道府県議会が中心になって推進していき、そこに他の行政、医療提供者、メディア、民間が参加することで六位一体となります。六位一体となることで、条例も早くでき、条例制定後にも地域の対策が広がりやすくなると思っています。また、議員発の条例は超党派で作ることにより、患者ニーズ、地域ニーズに合った条例となり、対策が広がりやすいということでよいモデルになるのではないかと思います。こうした動きが全国に広がってほしいと思います。

※報告内容は、シンポジウム開催当時のものです。

(編集 市民医療協議会 湯澤敦子グレイス、杉山真理子)

[関連情報]

■市民と議員の条例づくり交流会議2009 プログラム
http://www.citizens-i.org/jourei/gaiyo09.htm

更新日:2011年01月18日

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