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がん政策サミット2014(最終回) 開催レポート

  「がんの早期発見」
 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 検診研究部 研究員 雑賀 公美子さん

アセスメント、マネジメントをしっかりしてから受診率対策を

 がん検診の最終アウトカムは死亡率減少ですが、(1)アセスメント、(2)マネジメント、(3)受診率対策、この3つのステップを順番に行うのが実は大事で、(1)と(2)をやらずに受診率対策をしてもアウトカムに効率的につながるわけではありません。アセスメントとは、死亡率減少が認められて有効性が確立された検診を実施すること。マネジメントは、検診を正しい体制で実施することです。指標としては要精検者が全員精密検査を受けているか、検診機関・精検機関が仕様書に基づいた検査をしているかなどを把握することなどが挙げられます。組織や体制を整えたうえで受診率を上げてこそ、十分な意味があるわけです。3ステップそれぞれに指標があります。

 いま何をしなければならないか、まず必要なのは実態把握です。自分たちの都道府県、市区町村が、全国の中でそれぞれのステップがどのレベルにあってどの部分が欠けているのかを把握する必要があります。厚生労働省が市区町村における検診の実施状況調査を2~3年に1回実施しています。有効性が証明されている指針に基づいた5大がんの検診だけを実施している自治体の割合は、2008年では36.9%であったのが、2013年には22.4%まで減ってきています。指針に基づかない検診としては前立腺がんのPSA検診がもっとも多く、75%の自治体で実施されています。次は、マネジメントの部分の指標です。マネジメントの指標には、厚生労働省による地域保健・健康増進事業報告で把握されているプロセス指標と、国立がん研究センターで調査を実施している市区町村自治体における精度管理に関するチェックリストの実施率があります。チェックリストの実施率をみると、要精検率、精検受診率の把握に関する項目は、厚生労働省の地域保健・健康増進事業報告に提出していることもあり比較的実施率が高いですが、委託検診機関に仕様書を提出してもらい、それに基づいて選んでいるかに関する項目は、半分近い自治体ができていません。プロセス指標については、要精検率、発見率は過剰診断の問題がありますので、高ければいいというものではありません。精検受診率は100%近くを目指してください。

 受診率に関心を持たれる方が多いですが、実は最後のステップです。受診勧奨の仕方については、コール・リコールの効果が国際的に認められていますし、日本でも各地でコール・リコールの効果が報告されてきています。国立がん研究センターの調査による推計では、コール・リコールを実施している自治体は、まだ全自治体の3%から6%程度にとどまっています。

 患者関係者の方が事前に紹介してくださった好事例の中には、アセスメントに関する事例は残念ながらありませんでした。マネジメントに関しては、秋田県が検診実施団体別に精度管理指標を把握し公開しており、コール・リコールについてもモデル事業を実施し県内全域に広げようとしています。コール・リコールはいいということは分かっていますが、どういうやり方がいいかは分かっていませんし、地域や対象者によっても異なってきますので、モデル事業を実施することは大きな意味があります。新潟県は、居住自治体以外でも受診できる環境づくりを行っています。兵庫県では企業・職域との連携を進めています。

 私が把握している中でアセスメントの分野での好事例は、指針に基づき有効性の示された検診だけを実施することをがん対策推進計画の中に明記している大阪府です。また、市町村別に精度管理の指標であるプロセス指標や検診受診率を公表し、データの読み方の解説もつけています。職域での検診提供体制に関する調査を実施しようとしている福井県も好事例に挙げられると思います。受診率対策については、乳がん・子宮頸がんのクーポン券の配布で受診率は上がりましたが、受診率アップの持続的な効果があるかは継続的に見ていかなければならない問題です。

 ポイントは、3ステップを順番にやることです。検診は効果があると分かっているものに絞るべきです。検診には弊害もあり、どんなものでもやってもいいというものではありません。マネジメントに関しては、検診の内容や検診機関を決められる医師会の先生たちを巻き込みましょう。受診率向上については、自分たちの自治体で本当に効果があるか検証してみることが大事です。職域の受診率を上げるのであれば、職域でどのような検診(アセスメント)をどのようなやり方(マネジメント)でやっているか把握する必要があります。

 ディスカッション

 秋田県では県北の自治体で、検診を受けていない人の自宅に訪問する形でコール・リコールを実施し、大阪府では、昨年度からがん種によって対象年齢を絞って集中的にコール・リコールをしていることが報告されました。雑賀さんは、「コール・リコールはアセスメント、マネジメントのステップを踏んだうえで実施するのが大事であることは忘れないでください。どういう方法でいつやるのがいいのか、実際やっている自治体の実態を把握し事例を公開していきたいと考えています」と、同セッションを締めくくりました。
( 医療ライター・福島安紀 )


  当日プレゼン資料: がんの早期発見 (0.8MB)


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(更新日付:2014年06月17日)

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