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がん政策サミット2014(最終回) 開催レポート

  「地域の医療・介護サービス提供体制の構築/在宅医療」
 日本経済新聞社 大阪本社 編集局社会部次長 前村 聡さん

がん対策は地域医療対策に、地域医療対策はがん対策につながる

 都道府県の計画を見て、在宅医療が無条件にいいものだという前提で書かれているところがあるのが気になりました。在宅を希望するかは家族の状況や病状によっても異なります。地域によって必要なのはホスピスかもしれません。

 在宅医療の充実はがん政策だけの課題ではありません。地域医療対策あるいは社会保障全体の問題として捉えていくことが重要です。2018年は地域医療計画と診療報酬改定、介護報酬の改定が重なり、25年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になります。年間170万人亡くなる時代になると病院では全員を受け入れられないということで、国が在宅サービス拡大を進めているわけですが、そこに患者・家族の希望をどう反映していくのかという問題があります。

 そもそもどうして在宅が進まないのか。一つは、情報が少ない。がん患者必携の『わたしの療養手帳』が27県分発行されていますが、そういったものに在宅医療を受けるために必要な情報や診療所などの連絡先があると、ここに連絡してみようという発想にもつながります。また、入院なら生命保険や医療保険の入院給付金がもらえますが、在宅療養ではもらえないという問題もあります。在宅療養給付金がある民間保険(がん保険)もありますがまだ少数です。

 患者関係者が事前に選んだ好事例のなかでは特に「千葉県在宅緩和ケア支援センター」と大阪府のNPO法人「泉州がん医療ネットワーク」の取り組みがいいと思いました。私自身は、大阪府と広島県を好事例に選びました。大阪府を選んだのは、「在宅医療=看取り、緩和ケア」として施策を考えている県が多かったのに対し、大阪府は通院できている人に対する在宅医療対策も考慮に入れていたからです。「大阪府成人病センターが進捗管理をする」と責任主体も明確でした。広島県は「広島県がん医療ネットワーク」事業として、緩和ケアコーディネーターを作って顔の見える関係づくりを打ち出し、介護保険施設へのアドバイザー派遣事業も盛り込んでいたためです。

 こうした好事例を他県で実行するためには、目標と責任主体を明確にし、単なる研修をするだけではなく、顔が見える関係をつくっていくことが大事です。在宅看取り率の向上を目標にする自治体が多いのですが、望む人、望まない人の現状をより詳しく分析したうえで、より適切な目標を設定した方がいいのではないでしょうか。地域連携パスを主軸に据える自治体も多いですが、先駆けの熊本県がうまくいったのは大学病院、県立病院の関係者が集まって顔が見える関係を築き合意形成をしたからであり、パスを作成する過程に大きな意味があります。どんなに行政が一所懸命やっても医療関係者が動かないとなかなか進みません。医療関係者を巻き込んで役割を明確にしてやっていくことも重要ではないでしょうか。脳卒中などほかの疾患も共通の問題を抱えています。がん対策をきっかけに、ぜひいろいろな疾患の関係者と共闘しながら、旗振り役になって頑張っていただきたいと思います。

 ディスカッション

 最後に、好事例に挙げられた大阪府の泉州がん医療ネットワークについて、会場にいた関係者が「大阪府のがん対策基金に応募して事業を開始しました。患者さんの情報を共有するネットワークを作って、拠点病院からクリニック、訪問看護師、ホームヘルパー、患者・家族がその情報を共有できるシステムです」と説明。千葉県の参加者からは、「在宅緩和ケア支援センター」の事業は今年3月末に終了したものの、「地域の緩和ケア情報提供ページ」としてウェブ上で在宅に特化した情報提供が続けられることが報告されました。
( 医療ライター・福島安紀 )


  当日プレゼン資料: 地域の医療・介護サービス提供体制の構築/在宅医療 (0.7MB)


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(更新日付:2014年06月17日)

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