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がん政策サミット2014(最終回) 開催レポート

  「がん患者の就労を含めた社会的な問題」
 日本医療政策機構 がん政策サミット事務局

条例、計画を車の両輪として使い、長期療養者の就労対策を中身のあるものに

 がん患者の就労を含めた社会的な問題は、第2期の基本計画で全体目標に新たに加えられた「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」の目標に直結する分野です。海外の文献によると、社会的な問題には家庭生活、支援サービス、アピアランスと性など、さまざまな分野に分けられています。それを理解した上で、今回は就労の問題にフォーカスを当てて話をしたいと思いますが、就労以外にも社会的な問題はたくさんあることは忘れないようにしましょう。

 各都道府県の計画、事業、予算を見ると、社会的な問題は経済的な問題に関するものが多くみられました。1つ目は費用を補てんする経済負担の軽減策、2つ目は就労問題です。施策はさまざまな分野に分散していたのですが、整理してみると、(1)現況を把握する、(2)インフラを整える、(3)実行する、この3つのステージに分けられます。中でも、インフラ整備の施策を挙げていた県が最も多い傾向がありました。インフラ整備は外枠の体制整備と中身の話に分けられます。外枠では、「社会保険労務士の派遣」を記載した県が多くみられました。しかし、これまでそういったことに取り組んでいた社労士は少ないはずでこれは責任の押しつけになる危険性もあります。ただ、全国社会保険労務士会に聞いたところ、がん患者の就労は社労士さんたちの中でもホットなトピックスでeラーニングが立ち上がったそうです。

 残念ながら、インフラ整備の中身にあたる施策はほとんど見つかりませんでした。昨年のサミットで発表された国立がん研究センター高橋都先生の厚生労働科学研究から、マテリアルがいろいろと出ています。また、職場の患者さんに対する配慮の研究がされています。その論文も参考にしてみてください。47都道府県それぞれで試行錯誤をやるのはもったいないので、知恵を出し合って中身を埋めていく作業が必要だと思います。

 実際に就労支援をどうするか、「実行」の部分では、(1)復帰を含む、会社をやめないための実行、(2)会社を辞めた人が再就職するための施策の2種類があります。この分野での好事例を3つ紹介します。1つ目は、広島県が事業者向け啓発事業として作成した「経営者の皆様だからこそできること」という冊子です。県で実施した3000社のアンケート調査に基づいて企画されている点に注目しました。実例が紹介され、企業にインタビューした生の声がのっていますし、1人の従業員を失った場合にどれだけのインパクトがあるか試算しています。企業人にとてもわかりやすい言葉づかいで、他県にも参考になるマテリアルですからご覧になってみてください。2つ目は兵庫県の「長期療養者に対する就職支援モデル事業」、3つ目が滋賀県の「患者職場復帰円滑化モデル事業(医療と職場の情報共有ツールの開発)」です。

 この分野の施策については多くの県がこれから始めるという感じです。体制を検討し、支援、充実をどうやってやるのか具体的な部分が決まってくると、47都道府県の社会的支援が進むのではないかと思います。少しでも進んでいる県があったら情報共有していくことが大事です。ただ、心配事もありました。この分野の施策に「検診の推進、相談支援の充実」とだけしか書かれない県が少数ながらあったことです。市民・患者関係委員の方がチェックしないと、自分の県の就労支援、社会的問題は置き去りになります。そういうことになっていないかチェックしてください。また、せっかくあるがん条例は使いこなせているでしょうか。就労対策が条例でうたわれているのに計画がついてきていないケースがありました。がん条例が先行した県では、当時は問題になっていなかった就労支援を盛り込む必要があるかもしれません。社会保険労務士さんのような職種は法律に基づいて動くので、法律や条例に就労対策、社会的支援を盛り込むと強みになりますし、この分野も大きく動いていくのではないでしょうか。

 ディスカッション

 好事例に挙げられた兵庫県の担当者は、「ハローワークと拠点病院が綿密に連携する仕組みづくりはまだこれからです。長期療養者を受け入れる企業のリストが欲しいといわれるが準備がなく、これを広げようとすると新たな予算獲得が必要になるといった課題も上がっています」と報告。沖縄県では、「事業者と働く人のための がん治療と仕事 その両立支援のポイント」と題した小冊子を県と県社会保険労務士会、琉球大学が協働で作成し、県内の10人以上の事業所に配布することが紹介されました。また、会場の参加者からは、「産業医の活用も重要」「がん患者ではないとできないピアサポーターのような仕事を県があっせんするのも一つの方法」「まだ一度も就職したことのない若年のがん患者の就労も含めて考えるべき」との意見がありました。
( 医療ライター・福島安紀 )


  当日プレゼン資料: がん患者の就労を含めた社会的な問題 (0.4MB)


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(更新日付:2014年06月17日)

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