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がん政策サミット2014(最終回) 開催レポート

  「がんの予防」
 国立がん研究センターたばこ政策研究部長 望月 友美子さん

都道府県独自の目標を決め、無煙たばこや電子たばこも含め総力戦で

 がんの最大かつ予防可能な原因が、たばこですが、去年から今年にかけてたばこ問題の様相が大きく変わりつつあります。規制や人々の煙に対する認識に対してたばこ自体が変化してきました。例えば、昨年、国内企業による無煙たばこが大阪で初めてテスト販売されました。燃焼ではなく加温によって気化させたニコチンを吸うものもあります。規制が強まれば強まるほど、規制を免れるような煙のないたばこ製品が出てきています。もう一つは、電子たばこで、約10年前に製品化されたのですが、今ではネット販売されています。日本ではたばこ製品という扱いではないので、子供に対しては販売も使用も法律では禁止されていません。グリセリンやプロピレングリコールを加熱して発生する蒸気を吸うのですが、有害成分を含んでいても煙ではないことが法律の落とし穴となっています。しかし、消費者に対しては依存性物質ニコチンを供給する製品群なので本質は変わりません。このように、規制や年齢制限やたばこ税を免れるものがじわじわ出てきていて、気がついたときには蔓延してしまうということになりかねない状況です。

 たばこ対策はがんだけではなく、循環器の病気、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といったほかの病気を減らす対策にもなります。いま実際には喫煙率も消費本数も減っているのですが、いずれゼロになるのではないかと楽観してはいけません。世界の主要市場では、10年で無煙たばこ・電子たばこがシガレットと逆転するのではないかとの予測もあるので、ニコチン依存性の製品を想定して啓発や規制を行う必要があります。国の現段階の目標値の喫煙率12%の先を考えないといけないと思います。いま吸っている人たちが真っ先にたばこの犠牲者になることを考えると、1日も早くこの問題を終わらせていくのが課題です。また、対象集団によって喫煙率は違いますから、平均値だけで物事を見ると見誤るかもしれません。それから、がんの患者さんを含めた病気になってしまった方への禁煙指導のプログラムがないのも問題です。

 さて、患者関係者から紹介された好事例を目標設定が明確か、地域の独自の視点が盛り込まれているかという視点でみてみると、北海道、群馬県、沖縄県は独自の目標値を設定していましたし、秋田県は5年以内の目標を設けています。茨城県、兵庫県はがん対策の推進員をパワーアップすることが書かれていました。総力戦なので、教育委員会とのタイアップなしに学校では実践しにくいですし、京都府では拠点病院での活動も盛り込まれていました。キャンペーン予算や資源はどこでも足りませんが、電子媒体、地域のケーブルテレビ、あるいは行政が持っているものを使うことが明記されていたのは、北海道、鹿児島県、広島県でした。

 たばこ問題の難しさをどうやって乗り越えるのか。都道府県でできるのは条例による規制という方法だと思います。受動喫煙の防止の場合、いわゆる分煙では喫煙可能空間で吸う人たちの健康は守られませんし、分煙のための設備は効果がないとわかってきていますので、全面禁煙で評価することが大切です。山梨県は「分煙推進をやめる」と書いてありましたが、効果のない政策には思い切ってノーということが必要です。沖縄県では「増税を要望」する声もありますが、同県は計画において消費本数を減らすと宣言している唯一の県です。消費本数が減ると税収が減るわけですが、県民の命と引き換えに税収を徴収していいのかということではないでしょうか。

 都道府県のたばこ対策は、独自の問題分析に基づいた設定が必要です。全国的にどの地域でも熱心なNPO、NGOもいらっしゃいますし、青森県ではロータリークラブが動き出しているように、熱心なグループ同士が手を組むと多くのアイデアと持続性が生まれると思います。ここで気をつけていただきたいのは、決してたばこ産業とは手を組まないことです。国への政策提言、自治体間の連携、多様な実施主体が手をとり携え、好事例をどんどん共有していくのが重要だと思います。他県で実現するためには、政策目標を可視化し、その先も示すこと。費用対効果は追及していくべきですし、どれだけの人に影響を与えるかという波及効果まで考えるとよいでしょう。また、住民監視に耐える情報の透明化と、支援の獲得がポイントです。

 ディスカッション

 ディスカッションでは、三重県で「たばこの煙のないお店」、鹿児島県で「たばこの煙のないお店」の認定が行われていることが紹介されました。全国のがん拠点病院で禁煙電話相談「クイットライン」を実施しているところは3カ所だけとのことでした。岡山県では県北の津山中央病院でクイットラインをスタートしていますが、さらに今年度から岡山市内の拠点病院でも実施されるそうです。望月さんは、「煙のない環境、たばこを吸わないのが当たり前の公共空間をつくっていくことが大事です」と改めて強調していました。
( 医療ライター・福島安紀 )


  当日プレゼン資料: がんの予防 (7.2MB)


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(更新日付:2014年06月17日)

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