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IAPO(国際患者団体連合)「国際患者会議」参加レポート

「患者参画の価値」国・疾病を超えて患者の役割を問う

2010年2月にイスタンブール(トルコ共和国)で開催された、国際患者団体連合(International Alliance of Patients' Organizations)主催の国際患者会議(Global Patients Congress)には、「患者参画とは何か」その答えを求めて、世界各国から100人を超える患者アドボケートが集まりました。3日間にわたる会議の模様を市民医療協議会の沢口がお伝えします。

 2010年2月23日から25日にかけて、国際患者団体連合(International Alliance of Patients' Organizations 以下、IAPO)が主催する国際患者会議(Global Patients Congress)がイスタンブール(トルコ共和国)で開催されました。

 日本医療政策機構の市民医療協議会では、「患者・市民が、医療政策決定プロセスを主導することにより、最上の医療を社会全般に実現する」というミッションの下に、患者さんやそのご家族に対し、医療政策に関する知識や経験に触れる機会を提供する活動をしています。今回は、海外の患者アドボカシー活動を学ぶ目的で、全国から参加者を募集しました。この結果、多くの応募の中から選抜された香川由美さん(日本IDDMネットワーク理事)、中川圭さん(広島がんサポート副理事長<肩書きは2010年2月当時のものです>)、村上紀子さん(PAHの会理事長)の3人が参加することとなり、市民医療協議会の沢口が引率しました。

IAPO 4th Global Congress 会場の様子 会場には世界各国から100人を超える患者アドボケートが集結しました。IAPOは、疾病横断の国際患者団体連合で、現在50を超える国から40以上の疾病に関する患者団体をメンバーとして束ねています。規模を問わず患者団体を受け入れ、患者の声を医療政策に届ける活動を支援しています。国際会議の開催は4度目で、WHO(World Health Organization、世界保健機関)からもスピーカーを招くなど、国際的な患者支援組織として、その地位を確立しています。

 1日目はメンバーのみが参加できるセッションで、患者参画の意義を考える目的で、5つの部屋に分かれてワークショップが行われました。そのテーマは、IAPOの戦略やアクティビティ、組織間の連携体制を維持するための手法、実際のアドボカシー活動事例、WHOとのつながりなど、多岐にわたるものでした。2日目と3日目は協賛企業などからの参加者も加わり、お互いの立場を超えたディスカッションが実現しました。具体的には、様々な視点から患者参画の事例紹介や、患者参画の発展性、患者支援組織同士の協働可能性について議論するワークショップが用意されていました。

 3日間を通して、参加者は「IAPOのメンバーとして、医療政策決定プロセスへ患者が参画するために何を提供できるか」を、何度も問われることになりました。IAPOの事務局は、会議の冒頭から、ただ情報を集めるだけでなく、参加者全員が積極的に情報を提供し、それを共有し分かち合うという姿勢で会議に臨んでほしい、と説明していました。実際に会議は、一方通行の講義型ではなく、参加者全員が積極的に情報提供をし合う有意義なものとなりました。

世界各国のアドボケート事例を共有

 セッションの多くは、患者中心の医療を実現するための患者参画活動について、自国の好事例を共有するものでした。各国で保健環境や医療提供体制は異なるものの、「患者中心の医療を実現する」という共通認識の下に、参加者たちは自国に活かせる解決策を学んでいました。

 1日目のセッションでは、ウガンダ共和国の国立保健消費者団体(Uganda National Health Consumers/Users’ Organization)のロビーナ・カイティリティンバ(Robinah Kaitiritimba)さんが、医療が十分に提供されていない環境下でも、患者の権利を訴えていける環境づくりが重要だと語りました。

 2日目のセッションでは、国際看護師協会(International Council of Nurses)のテスファミカエル・ジェブレッヒ(Tesfamicael Ghebrehiwet)さんによる患者参画の説明が行われました。患者参画の視点からみると、これまでよく用いられてきた「Empowerment(エンパワーメント)」(力をつけること)から「Self-Agency(セルフエージェンシー)」(自己管理)という段階に変化しつつあり、患者が能動的に医療に関わっていく姿勢が求められていると語りました。

 また、日本から参加した患者アドボケートたちが最も印象に残ったセッションとして選んだのは、3日目のワークショップ「Patient Involvement Encouraging in its Practice」(実践における患者参画の促進)でした。3人は、「お互いの国の事情は違うけれど、患者中心の医療を実現するために患者として何をすればいいか、日頃の活動を振り返り共有することができた」と語っていました。

 3日間を総括するセッションでは、患者中心の医療を実現するために「帰ってから何をするのか」「患者参画はどのように変わっていくべきか」を具体的に問われました。ここでは、明確な答えを導き出すというよりも、参加者で自らが関与できる可能性を発表し合うという形式がとられました。そして最後に「IAPOとの協働の可能性」をフィードバックするという構成でした。

IAPO参加者。左から香川さん、沼田さん(ボランティア通訳)、中川さん、村上さん 日本からの参加者3人は、香港でIAPOのホームページやニューズレターを中国語に翻訳する活動が始まっていることを踏まえて、「日本でも正確な情報を入手できる環境を整え、患者アドボカシーを活性化するように、自分たちができる具体的なアクションを検討したい」と話し合い、発表しました。

 各国からの参加者は、それぞれ持ち帰る内容は異なりますが、患者中心の医療を実現するために、患者参画が必要不可欠だという認識が会場全体で共有されました。

患者が求める「患者のあり方」

 ここで、象徴的なエピソードを紹介します。成田空港で初めて顔を合わせた3人は、会議が開かれる前日の夕食の時、お互いの自己紹介を早々に切り上げ、日本における患者団体の組織運営について、議論し始めました。「わずかな人材や資源で運営しているため、自ら主体的に参加してくれる賛同者を必要としている」「情報を得るだけでなく、提供する気持ちで参加してくれると、本当にありがたい」といった日頃の活動にまつわる会話を聞いているうちに、私は日本の患者間でも意識に大きな違いがあり、日頃の活動への主体性に温度差がある状態が、彼女たちを取り巻く環境なのだと理解しました。こうした患者団体運営の経験を踏まえて、IAPOの国際患者会議に参加したことは、参加者にも大きなインパクトを与えたようでした。

 「セッションの合間に、参加者一人ひとりと直接話し、国や疾病を超えて情報交換する時間があったのは、とても有意義でした」香川さんはそう言って、交流を通じて感じたことを話してくれました。「いつも自己紹介をする時、自分が患者本人であることを先に言うんです。日本では、『大変ですね』という反応がほとんどですが、ここでは『どうしてそんなこと言うの?IAPO 4th Global Congress ブレイクアウトセッションの様子私も疾患を抱えているわ』という反応をされるんです。きっとみんな私の病気ではなくて興味や考え方、活動そのものを知りたいんですね」。IAPOに集まる「患者」と日本における「患者」との間には、大きな意識の違いがあることを肌で感じたようでした。

 3人は、患者の意識の持ち方・あり方について、それぞれのセッションから学ぶべきことがたくさんあったと振り返りました。

日本における患者参画の価値とは

 日本の医療政策における患者参画はいったい何を意味するのでしょうか。会議の後、日本からの参加者3人に「日本に帰って何をしましょうか」と尋ねてみました。香川さんは、「日本の患者さんが海外の事例を知る機会はほとんどないので、IAPOの活動を定期的に日本の患者さんに伝える手段を考えたい」と力強く話してくれました。中川さんと村上さんは「今はまだ私たちに何ができるかわかりません。でも、IAPOの会議に参加したことで、疾病や国を超えた情報共有が重要だと実感できました。この経験を日本にいる仲間にも必ず伝えます」と約束してくれました。

 今回参加してくれた3人は、活動する疾患領域も参加している患者団体の規模も異なります。IAPOへの参加を通して、同じ目標を持ち、疾患を超えて共に活動していこうと約束できたことこそが、今回の大きな成果だったと言えるのではないでしょうか。

 患者参画が始まったばかりの日本にとって、海外の患者アドボカシー活動に学ぶべき点は多いでしょう。様々なステークホルダーへの働きかけだけでなく、患者自身の意識変容と主体的な取り組みにこそ、日本の医療を動かすヒントがあると感じました。

(市民医療協議会 沢口 絵美子)


[関連サイト]



更新日:2010年05月30日

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