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患者として記者として。 〔全5回〕 本田 麻由美さん

乳がん告知のショックから、夫の支えにより前向きな気持ちを持つようになり、がん患者、新聞記者として、医療政策を見つめ記事を書き始める―...

患者として記者として。 〔全5回〕 本田 麻由美さん
がん 本田 麻由美さん
がん対策推進協議会 委員 読売新聞社会保障部 記者

乳がん告知。ショックと混乱のなか、冷静だった夫の支え

―――2002年5月に乳がん告知を受けた際の心境を教えてください。また当時勇気付けられた言葉や存在はありましたか。

私は社会保障部という部署にいる記者なので、医療のことはずっと取材していたのですが、対象は医療制度で、臨床の問題や具体的な病気のことはもともと大して知りませんでした。だから、乳がんだと言われて、もうすぐ死んでしまうのではないか、と感じられてなりませんでした。「こんなぴんぴんしているのに、こんなに元気な私が生死の境目にいるがん患者だなんて」と、その告知が信じられず、「なんでこんな事になったのだろう」と、ショックと混乱が襲ってきました。

ただ、すぐに、それよりもどんな治療をしたらいいのだろうとか、この病気はどんな病気なのだろうとか、知らないことばかりだから、それを調べることに神経が集中していきました。あとは治療上の選択をどんどん迫られるのです。後悔しないために、色々調べるので忙しく、落ち込んでいる暇はあまりありませんでした。逆にある程度治療が進んで、「後はこの抗がん剤治療を規定通りやって、ホルモン剤治療をすればいいんだ」という見通しがついてから、すごく落ち込みました。再発不安ですね。そこからの方が精神的には辛かったです。

人って気持ちが揺れ動くものだと感じました。「ちゃんと治療を乗り切れば、乳がんはそんなすぐ死ぬ病気ではないのだから」と思える前向きな時期があったかと思うと、「何やっても私なんか駄目な人間だ、どうせ、あと1、2年生きているか分からない。」と思って落ち込む時もあります。そんな時に、夫が冷静に色んなことを調べてくれて、また私自身が調べる材料を揃えてくれたのは力になりました。

遺言の気持ちで書いた記事

―――その後、がん患者という立場から医療政策を見つめられ、記事を書かれています。どのような心境の変化がありましたか。

治療を受ける中で憤ることが色々ありました。例えば、乳房全摘手術の際に同時再建をしたかったのですが、混合診療になるからできないと言われました。卵巣がんの疑いでMRI検査を受けたときも、放射線科のドクターは、私の主治医宛の手紙を渡すだけで、その中身に関して私には伝えられませんでした。「私の医療情報なのに、なぜ私には説明してくれないのか」と思いました。セカンドオピニオンについても、抗がん剤治療をするのか、ホルモン剤だけでいくのかなど、他の先生の話も聞きたい気持ちがありました。もちろん、主治医の先生のことをとても信頼していましたが、他の意見も聞きたいという気持ちもあるのです。ただ、患者になってみると、それがとても言いづらいことだと実感しました。

カルテ開示も同様です。カルテが欲しいということは、自分の主治医には言いづらいことだと患者になってみて感じました。カルテ開示について、記事ではよく書いていたのです。「自分のことなのだから、ちゃんと先生に申し出て自分で考えましょう」などと(笑)。でも、自分のことになると、主治医に言うのは本当に難しい。先生のことは信頼しているけれど、私は自分の記録としても手元に持っておきたかったのです。それをどう言おうかと、悩みました。そういう色々な思いを上司に話していたのがきっかけでした。

「お前、医療を取材してきたのだから、患者になってからの体験や思いを書けるか」と言われたのです。その時は、卵巣がんの疑いまで指摘されており、もう先は長くないと感じていたので、「遺言になるかもしれない」というくらいの気持ちで、「書きます」と返事をしていました。だから転機というよりも、切羽詰っていたという感じでした。そこで、未承認薬の問題をはじめ、私がおかしいと思う問題について2003年の4月から月1回か2回ぐらいのペースで書き始めましたのが始まりです。


本田麻由美(ほんだ まゆみ)さん

読売新聞編集局社会保障部記者。2002年に乳がんの告知を受け、数度の手術を受ける。現在も治療に励みつつ患者としての視点を生かした記事を執筆中。がん対策推進協議会委員。がん対策情報センター運営評議会委員。

更新日:2009年08月31日

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