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アジアの血をもらって 〔全2回〕 内田 絵子さん

2007年10月7日、東京に、アジア6カ国から乳がんサバイバーが集まった。インドネシア、韓国、シンガポール、台湾、マレーシア、日本。乳がん患者に国境はない。――

アジアの血をもらって 〔全2回〕 内田 絵子さん
がん 内田 絵子さん
東京都がん対策推進協議会 委員 特定非営利活動法人 ブーゲンビリア理事長

アジアの血をもらって

――――今回のアジア大会を開かれたもともとのきっかけを教えてください。

夫の駐在地であったシンガポールで、94年、乳がんを宣告されました。44歳の時です。95年のお正月に、左乳房の全摘出手術を受け、6ヶ月の抗がん剤治療が始まりました。乳房を失うという大きなショックのなかで、シンガポールの医療は本当に私をやさしく包んでくださったと思っています。様々な人種のドクターやナース、医療関係者に励まされての日々でした。そして何よりも、患者主体の医療とも言えるシンガポールの医療体制に本当に驚かされました。

主に5つの点で、シンガポールでは情報開示制度や患者の自己決定制度があったと思います。それは、インフォームド・コンセントの充実、セカンド・オピニオン制度の確立、腫瘍内科医の充実、食事メニューでさえも選択できる選択の自由、そして緩和ケアの充実です。患者が自己決定をできる医療、そして緩和ケアに代表されるように、患者が“感情を出せる医療”があったと思います。シンガポールでは、“医療はサービス業である”ということがよく言われ、まさに様々なサービスを享受できた自分がいたのです。

一方でシンガポールには、日本との間で悲しい歴史もあります。昭南島と呼ばれ、植民地化され、戦争による多くの死者を出した歴史もあるのです。それにも関わらず、日本人の私に大変親切にしてくださり、また、手術時の輸血により、文字通り、アジアの血を頂いたのです。このことに対して、どうやって感謝の気持ちを伝えられるだろうか、どうやって恩返しができるだろうか、そんな想いが今回アジア大会を開いたもともとの背景にあります。



乳がん患者会の設立へ。

―――その後、帰国され乳がん患者会ブーゲンビリアを設立されました。

帰国後、『メイド・イン・シンガポールのおっぱい』という本を書かせて頂き、印税をアジアに寄付することで、ささやかながら恩返しを始めていました。また、本がきっかけで、居住している立川市で講演やスピーチをする機会や、ドキュメンタリー番組に取り上げられる機会なども増えていったのです。

そんななか、毎回20人から30人くらいのメンバーが集まって、女性の医療について、議論を重ねることも増えていきました。せっかく集まったこの会をこのまま解散させてしまうのはもったいない、ぜひ継続して議論していこうという声が高まり、“女性の医療を考える会”としてスタートさせたのです。

当初から3つの軸を中心として活動していました。ひとつは、色々な話を聞いたり、学んだりして、幅広く考えていこうということです。つぎに、“学び癒し”です。学ぶことのみならず、患者会として、癒しの場としても機能したいという想いです。そして、今回のアジア大会にもつながりますが、アジアを支援していきたいというアイデンティティーです。98年に発足した会は、2005年には特定非営利活動法人格を取得し、2007年には10周年を迎えることができました。



アドボカシーの視点から。

―――2006年3月には、第2回がん患者大集会の実行委員長も務められました。

ちょうどその頃からアドボカシーの視点がいかに重要であるかを感じ始めていました。“がんは政治である”という言葉がありますが、まさにそうなんです。患者の声をいかに政策にまでつなげるか。このことは、2006年にASCO(米国臨床腫瘍学会)を見学したり、2007年にNBCC(米国乳がん連合)に参加するために渡米した際、特に強く感じました。

アメリカで、“もし気付いたのなら、行動しましょう”という言葉を聞きました。がん政策を患者の視点から見てきました。そして気付いたことがあるならば、行動していく必要があるのだと感じました。参加できるところ、行動できるところからでいいのです。今回のアジア大会においても、このアドボカシーの視点をもとに、アジアのベンチマークを作るのだ、という気概で取り組んできました。


◆NPO法人ブーゲンビリアのHPはこちら



内田絵子(うちだ えいこ) さん

東京都がん対策推進協議会委員。夫の仕事に伴ってシンガポール駐在中の94年、乳がんを宣告される。44歳の95年1月5日左乳房の全摘出手術を当地にて受ける。手術、そして6ヶ月の抗がん剤治療を受けるなか、シンガポールでの開放感に包まれた患者主体の医療に驚く。「感謝・恩返し」の気持ちで乳がん患者「ブーゲンビリア」を設立。2007年、10周年を迎えた。

更新日:2009年08月31日

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