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がん政策サミット2009秋 10月3日のレポート

我が国のがん対策の現状
厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室 室長 鈴木健彦さん

基本計画の達成のためにすべきこと
がん検診受診率50%達成が急務

 2006年がん対策基本法が成立し、その翌年に策定したがん対策推進基本計画に基づいて我が国のがん対策が進んでいます。サミットの冒頭では、厚生労働省 がん対策推進室長の鈴木さんが、そして基本計画の進捗状況ともっとも力を入れている施策について講演しました。

厚生労働省健康局総務課がん対策推進室室長 鈴木健彦さん

 がん対策推進基本計画の全体目標は、この10年間で「がんによる死亡率(75歳未満の年齢調整死亡率)20%減少」と「すべてのがん患者さん及びその家族のQOL(生活の質)の向上」――この2つを達成することです。 そのために、がん医療、医療機関の整備等、がん医療に関する相談支援及び情報提供、がん登録、予防、がん検診、そして、研究といった7つの分野で目標値を定めています。

 

国民を動かすには患者の力が必要

 なかでも厳しい状況にあるのが、がん検診受診率50%以上の達成です。現在は男性で3割程度、女性は2割程度で、これをいかに上げるかが私どもの直近の課題です。2009年7月には、厚生労働省内に「がん検診50%推進本部」を設置しました。

 がん検診を受けない理由を調査したところ、「健康状態に自信がある」「時間がない」「面倒」との答えが多くみられました。行政だけでは国民を動かせないので、関係団体の皆様方の力が必要です。また、がん検診の受診率を上げるには、企業も巻き込んでいかなければならないと考えています。10月は、毎年、がん検診受診50%達成に向けた集中キャンペーン月間とし、各都道府県でもイベントを企画してもらっています。

 現在、来年度予算概算要求を見直しています。がん対策推進協議会ワーキンググループの提案書の項目について、予算要求するもの、既存の予算で対応できるものを選択しながらできる限り盛り込もうとしているところです。計画自体も中間報告などで経過を見て、ブラッシュアップしながら推進していきたいですね。

 がん患者を含めた国民が、進行・再発といったさまざまながんの病態に応じて、安心・納得できるがん医療を受けられるようにするなど、「がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」の実現を目指すというのが基本法のコンセプトです。これに向けて、私どもも施策を展開しますし、皆様方のご協力もいただきたいと思います。 (ライター 福島安紀)


がん対策基本法から3年~できたこと、できていないこと~
当機構 がん政策情報センター センター長 埴岡健一

都道府県格差を解消するには
良い県に合わせて均てん化を!

 国のがん対策推進基本計画ができて約2年半。5年計画で進んでいるがん対策推進基本計画は、10月が後半の2年半に向けた折り返し点です。今後どうやって目標を達成し、都道府県のがん対策格差をどう埋めるのか、当機構 がん政策情報センターの埴岡が、その課題を提示しました。

当機構 市民医療協議会 がん政策情報センター センター長 埴岡健一

 2007年4月にがん対策基本法が施行されてから、がん医療やがん対策がよくなったと思いますか。あと2年半の後半戦に、どうやってスピードを上げるか考えましょう。

 個々に見ていくと、がん対策基本法ができて、患者が政策決定に参加するようになった点はよかったですよね。でも、がん登録の位置づけ、省庁横断的な取り組みが入っていないという課題があります。

 また、国のがん対策予算は増加し、新規項目も増えましたが、予算化されていたのに使われなかった「不用」の発生、単年度主義などの問題点もあります。がん対策推進協議会のワーキンググループが提案した予算提案書も全面採用してほしいと思います。

 国のがん対策は、設定している評価尺度は目標が達成されつつありますが、たとえば、拠点病院に相談窓口はあっても、相談件数がゼロのところがありました。意味のある評価指標と目標の設定が必要です。

都道府県のがん対策の課題とは

 がん対策条例は、2009年10月1日に奈良県で制定されて6県2市に増えました。あと10県ぐらい広がるとみられますが、残された県をどうするかという問題があります。

 都道府県のがん対策推進基本計画は、もうすぐ47都道府県揃いますが、県の間で対策格差が開いてきていますし、進捗管理が欠如しているところもあります。がん対策推進協議会を開催していないところがあるのも問題です。

 一方、10月31日までに47都道府県ががん対策のアクションプランを作ることになっています。患者委員、患者団体としては、これにいかに働きかけるかが大切です。

 それから、県によっては、医療機関の連携ネットワークの会議が活発なところがあります。大阪府、沖縄県などがモデルケースですが、こちらも注目点です。一方で、未設置県、患者委員がゼロのところもあります。

 都道府県のがん対策には格差がありますが、良いほうに合わせるために今から何をすべきか考え、均てん化を目指しましょう。 (ライター 福島安紀)


がん対策条例の現状
当機構 がん政策情報センター プログラムマネジャー 天野慎介

議員提案と六位一体がキーワード
好事例を参考に短時間での条例制定を

 がん対策条例は、すでに6県2市で制定され、それ以外にも10県で新たに条例制定に向けた動きが進行中です。都道府県あるいは市町村でがん対策条例をスムーズに制定するにはどうしたらよいのでしょうか。当機構の天野が、すでに条例を制定した県の好事例から分析しました。

当機構 市民医療協議会 がん政策情報センター プログラムマネジャー 天野慎介

 自治体のがん対策条例が制定されるプロセスをパターン化してみると、最初に何からのきっかけが生まれ、条例が必要だと一般に認知されます。認知されたことで議員、患者団体などからの提案で条例が成立し、最後に条例に基づいてがん対策予算が増えたり、積極的な施策がとられるなど、効果が表れるわけです。

 島根県と高知県のがん対策推進条例は、患者や患者団体の働きかけがきっかけになって、議員提案で条例制定が行われました。条例制定の結果、島根県では、県内に20か所以上の患者サロンが設置されましたし、高知県では、相談事業を患者団体へ委託するなどの効果が表れています。

ほかのがん対策条例を制定する展開も

 一方で、神奈川県のがん克服条例では、私どもが調べた限り患者団体が関わっていません。きっかけは、県が「がんへの挑戦 10か年戦略」を策定したことで、がん撲滅をめざす議員連盟ができ、53年ぶりの議員提案条例が可決されました。長崎県でも、患者団体などは関与せず、初めての議員提案で条例が成立しました。

 患者が関わっていないとはいっても、ここにもヒントが隠されていて、どちらも「議員提案」が一つのキーワードになっています。がん対策条例の制定を県議会議長や議員に働きかけるときには、何十年ぶり、あるいは初めて議員提案で条例を成立させることつながるというのも訴えのポイントになります。

 もう一つのキーワードは「六位一体」あるいは「七位一体」。実際の当事者である患者・家族や患者団体を中心に、その周りを立法府、行政、医療従事者、企業、マスメディア、大学などのステークホルダーが取り囲む形で、一緒に取り組むことが、条例作りのキーになります。

 がん対策条例は、患者ニーズに合ったベターな施策をもたらします。今後は、がん対策条例から、たとえばがん検診条例、がん登録条例などほかのがん関連条例を制定するタテ展開が考えられます。またヨコ展開として、まだ条例のない都道府県では、ほかの県の好事例をもとに、短時間での条例制定が実現できるはずです。 (ライター 福島安紀)


がん対策条例・島根県の事例、県議員の立場から
島根県県議会議員 がん対策推進議員連盟会長 佐々木雄三さん

日本初のがん対策推進条例を提案して 条例を実現する資金「がん対策募金」

 2006年9月に、全国初のがん対策条例を制定した島根県。議員立法で条例を作り、2009年9月29日にがん検診受診率向上を目指した「がん撲滅宣言」を行うなど、がん対策に積極的に取り組む佐々木さんが、条例を作るにいたった経緯とその後の取り組みについて話しました。

島根県県議会議員 佐々木 雄三さん

 島根県では、がんの患者さんや家族の要望を受け、2006年9月、議員提案により、全議員の賛成で島根県がん対策推進条例が成立しました。 条例の制定にあたっては、その後どういう活動をしていくかが大事です。島根県では、高度放射線機器やPETなどの導入費用を集める「がん対策募金」が、条例制定後の活動の大きな柱になっています。いろんな人がユニークなアイデアを出してくれました。バナナ1袋につき市場、輸入業者、小売店が2円ずつ合計6円を寄付する「バナナ募金」では、年間600万~800万円も集まっています。

 現在の募金額は総額6億4000万円。今年度末で終わりますので、県内6拠点病院に7000万円~2億円を差し上げ、がん医療充実の起爆剤にしてもらおうと思っています。 (ライター 福島安紀)

 


がん対策条例・島根県の事例、行政の立場から
島根県健康福祉部医療対策課 小豆澤伸司さん

条例は県ががん対策に力点を置く起爆剤
行政から見たがん対策条例の効果

 条例の制定により、がん患者・家族、医療関係者、行政、県議会、企業、メディア、教育が「七位一体」となったがん対策を進める島根県。島根県健康福祉部医療対策課の小豆澤さんが、条例が県のがん対策を変える上でどういう効果があったのかを話しました。

島根県研恒福祉部医療対策課 小豆澤伸司さん

 実は、患者さん方はまず県に、条例を作ってくれと要望を出しました。これを県は断っています。この要望を佐々木県議が受け止めて、議員提案での条例制定に至りました。

 そういう経緯はありますが、条例は、行政が積極的にがん対策に関わる起爆剤になりました。条例で「患者会等の活動を支援」を条文化したことで、がんサロンの活動への関与など、患者・家族支援を進められるようになりました。また、もともと患者さん家族の方の声を受けてできた条例なので、患者や家族の声を聞くというスタンスで県の事業も展開しています。 (ライター 福島安紀)

 


がん対策条例・高知県の事例から
高知県がん患者会 一喜会会長 安岡佑莉子さん 

がん対策条例制定を成功させる秘訣 まずは陳情書と意見書を提出しよう

 高知県では2007年3月、県として2番目にがん対策推進条例が成立し、県のがん対策が大きく動くきっかけになりました。県に条例制定を働きかけた一喜会の安岡さんが、条例制定を成功させるコツを語ります。

高知がん患者会 一喜会 会長 安岡佑莉子さん

 高知県では、患者会が、まず陳情書を作成し県に提出しました。そのとき、効果を高めるために意見書もつけました。 条例を作って欲しいという話を誰にするかですが、議会の中の多数会派の党首に話を持っていくとスムーズに進みます。私たちは、県議会議長に話を持っていきました。

 議会が働いてくれなかったら署名を集め、陳情書、意見書と一緒に知事、県議会議長に提出します。このときに、マスコミに協力してもらうと効果的です。

 条例が成立するまでにはかなり時間がかかりますが、大変だとか、無理だろうと思ったらできません。時間はかかっても必ずできますので、議会にまめに足を運んで、条例の必要性を訴え続けてください。

 高知県の場合は、条例によって、県独自の相談室が開設されました。この事業は、年間五百数十万円の予算で患者会に委託されています。皆さんもがんばって条例を作っていただければ、医療も変わってくると思います。どんどん声を上げていきましょう。 (ライター 福島安紀)


がん対策条例・愛媛県の事例から
愛媛県県議会議員 愛媛県議会がん対策推進議員連盟会長 岡田志朗さん

来年条例制定を目指す愛媛方式とは
患者の声で県議会議員を動かそう

 すでにがん対策条例を制定している県以外にも、がん対策に関する条例を制定する動きが出始めています。2009年3月に超党派の愛媛県議会がん対策推進議員連盟を結成し、条例制定に向けて大きく動き始めた愛媛県議の岡田さんがその活動と今後の見通しを話しました。

愛媛県県議会議員 岡田志朗さん

 私は、2008年7月、胃がんの手術を受けました。父もがんで亡くしています。2009年の3月に、完全な超党派で愛媛県議会がん対策推進議員連盟(以下、がん議連)を作りました。県議会議員がほぼ全員参加しています。

 条例づくりはわれわれ議員の仕事です。がん議連では、来年の当初予算に向けて、2月議会には条例案を出すという運びの中で動いています。愛媛もそうですが、議員の中でノリの良い連中をつかまえてきて、患者会の皆さんが議員連盟を作らせるのも一つの方法です。

 島根県に追いつくのは難しいですが、われわれが今度は島根のお尻をつっついて、また逃げてという中で、全国のがん対策のレベルが上がっていけばいいなと思っています。 (ライター 福島安紀)


がん対策条例・愛媛県の事例から
NPO法人愛媛がんサポート おれんじの会理事長 松本陽子さん

六位一体を実現するためにできること
条例制定に結びつける環境整備を

 きっかけを作ったがん対策推進条例の必要性を訴え、県議会議員や医療者への働きかけをしている愛媛県の患者団体「NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会」の松本さんが、条例制定へ向けて、患者会がどう動いているかを話しました。

NPO法人愛媛がんサポート おれんじの会 理事長 松本陽子さん

 愛媛県では、がん議連が6月に1回目の「がん対策推進にかかる懇話会」を開催しました。この会は正に「六位一体」、六者が話をする場になりました。10月18日には、一般の方々が対象の愛媛がん対策フォーラムを開催します。

 一方で、医療者にも条例の必要性や他県の現状を知ってもらう必要があります。私は愛媛県のがん診療連携協議会の委員として、協議会の場で条例について説明する時間をいただきました。条例推進に向けて医療者も支援をしていくことが協議結果として出されています。

 もう一つ、世論を動かすには、マスコミの協力が欠かせません。愛媛県では、地元紙の愛媛新聞が協力してくださっています。私ども患者が、いろんなところへ労力を惜しまず出て行くことが大事だと思います。 (ライター 福島安紀)

 

※肩書きは当時のものです

10月4日>>

更新日:2009年11月30日

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