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がん政策サミット2010春 4月10日のレポート

あいさつ
当機構 がん政策情報センター センター長 埴岡健一

全国の患者リーダーが結集してがん対策の変革を
皆さんの声を国会議員に届けよう

 3回目となったがん政策サミットには、31都府県のがん対策推進協議会委員など48人の患者リーダーや県庁のがん対策担当者が集まりました。最初に、当機構の埴岡健一があいさつしました。

 がん政策サミットは2009年の春から半年に1度開催しており、3回目となります。今回は、31都府県の患者リーダーが集まりました。東北6県は初めてすべて揃いました。次回は47都道府県どこも空席がないように、そしていずれは、二次医療圏すべてから患者リーダーがひとり以上は参加するような会になればと思います。

患者の声を集約してマニフェストに

 みなさん、2009年秋のがん政策サミットのときと今と比べてがん対策は進んだでしょうか。「まだまだ」だという声をいつもお聞きしています。患者相談をされている方は、なかなか患者さんの闘病環境が改善しないことにもどかしい思いをされることもあると思います。また、残念ながら今日ここに来て意見を言えない方もおられることを忘れないようにしたいです。前回まではあるべき政策をまとめることに主眼を置いていましたが、今回はそれを一歩進めて、みなさんの作った政策を紙にまとめて、最終日に、国会議員に渡すことになっています。

 これまでは、“患者の声”を届けようと思っても、患者の声が何かを知ることが簡単ではないところがあったと思います。しかし、今では1600人から回答があった患者意識調査の結果を見ることができます。また、がん対策推進協議会の提案書取りまとめ担当ワーキンググループが全国6カ所で開催したタウンミーティングで、患者・家族、医療提供者、地域の行政担当者など約1000人から約7500件の声を集めました。

 がん対策推進協議会で、それが一部修正のうえ承認され、昨日(4月9日)、日本全国の声をもとに作成した「平成23年度 がん対策に向けた提案書~みんなで作るがん政策~」を、長妻昭厚生労働大臣に手渡したところです。

 「がん政策サミット2010春 ~患者と議員が作るマニフェスト~」では、こうした声を踏まえて、みんなで一緒にモデルとなる“がん対策マニフェスト”を作って国会議員に届けます。来てよかったと思って頂ける会にしたいと考えていますのでよろしくお願いします。 (ライター 福島安紀)


来賓あいさつ
厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室 室長 鈴木健彦さん

長妻昭厚生労働大臣が「がん総合相談事業」に強い関心
県のアクションプラン実現には患者の声が重要

 厚生労働省健康局総務課がん対策推進室の室長の鈴木さんが、前回の「がん政策サミット2009秋」に引き続き、今回も来場くださいました。患者が動かすがん政策に大きな期待を込めたエールを送りました。

 昨日(4月9日)、がん対策推進協議会の委員のうち8人が、「平成23年度 がん対策に向けた提案書~みんなで作るがん政策~」を長妻昭厚生労働大臣に手渡しました。このために設けていた予定の時間は15分でしたが、実際は30分余りに及びました。また大臣自身ががん患者・家族である7人の委員の声を直に聞いたのは大きな出来事だったのではないかと思います。特に大臣が関心を示したのは、がん経験者による相談支援の体制確立で、早速、「そういった仕組みができないか考えるように」との宿題が、がん対策推進室に出されました。

患者の声を国の政策にも反映させたい

 都道府県もがん対策推進計画、そしてアクションプランを策定しています。今後、それを実現するために各地の患者関係者の皆さんのお力が重要になります。国から県の担当者に話をするのは限界がありますので、ボトムアップという形で皆さんの声を県の担当者に伝えていただきたいと考えているところです。

 今後とも皆さんのご意見を聞きながら、がん対策をより一層推進し、「がんに負けない社会」を実現していきたいと思いますので、ご理解とご協力をお願いします。 (ライター 福島安紀)


『がん対策提案書』は、こうして出来た
当機構 がん政策情報センター プログラムマネジャー 天野慎介
(厚生労働省がん対策推進協議会会長代理/NPO法人グループ・ネクサス理事)

政策立案プロセスを改善しよう
提案書がどの程度反映されるかチェックを

 がん対策推進協議会 提案書とりまとめワーキンググループ(以下、WG)が案を作成した「平成23年度 がん対策に向けた提案書~みんなで作るがん政策~」には、全国のがん患者さんや医療提供者の声が集約されています。厚生労働省がん対策推進協議会の会長代理(NPO法人グループ・ネクサス理事長)で、当センター プログラムマネジャーでもある天野慎介が、提案書作成までのプロセスを説明しました。

 WGの委員はがん対策推進協議会委員20人のうち14人が務めていますが、委員だけでできることには限界があります。そこで、患者さん、医療提供者、地域の声を全国から幅広く集約するために、2010年1月から3月にわたり、都道府県がん対策推進協議会等委員へのアンケートと全国6カ所でのタウンミーティングを開催しました。

がん対策改善のためにPDCAサイクルが重要

 全体で約1000人のがん患者さんや医療提供者などから集まった約7500件の意見を元にコメントを抽出、論点を整理して、「予算」「診療報酬」「制度」3つの側面からなる140本の推奨施策を作成しました。WGの提案書案が協議会で審議承認され、一部修正され長妻昭厚生労働大臣に提出されました。

 長妻大臣への提出に私も立ち会いましたが、「よく読ませていただいて必要な予算に反映させていきたい」とおっしゃいました。今後は、この提案書の内容がどれだけ政策に反映されるかチェックしていく必要があります。がん政策をよりよいものにしていくためには、計画し、実行し、評価して改善していくという、いわゆるPDCAサイクルを実行していくとともに、患者関係者が対策の進捗を見守り、声を出し続けていくことが重要です。 (ライター 福島安紀)


個別分野のマニフェスト案作成(グループワーク)

がん対策10分野の「目指す姿」まとめる
患者の願いを凝縮した文に

 今回のがん政策サミットの目玉は、患者リーダーたちがグループワークによって、がん対策向上のためのマニフェスト案を作成すること。2日間でのべ7時間程度のグループワークを実施しましたが、1日目には、まず5つのグループに分かれて、がん対策の10分野それぞれについて、「目指す姿」をマニフェスト文案にまとめました。

 グループワークでは、5グループに分かれ、がん対策における分野別のマニフェスト案を作成しました。

 分野の分け方は、がん対策推進基本計画に基づき「放射線療法および化学療法の推進と、医療従事者の育成」、「緩和ケア」、「在宅医療(在宅緩和ケア)」、「がん医療に関する相談支援および情報提供」などの10項目です。そして、分野別の目標を、「誰が、何を、何のために、いつまでに、どのように」を明確にしたうえで、100字以内で表現することとしました。

 「『早急に』などと曖昧にせず、具体的な期限を決めたほうがよい」など、がん対策がより確実に実現されるために何が必要か白熱した議論を重ね、患者・家族・遺族の切実な声が詰まった10本の文が完成しました。この10本は以下の通りです。 (ライター 福島安紀)

患者の提案する個別分野のマニフェスト案

1. 放射線療法及び化学療法の推進並びに医療従事者の育成
 「医療現場で不足している放射線療法及び化学療法の専門医療従事者の育成体制を整備することにより集学的治療を日本全国へ普及させ、均てん化を実現する」

2.  緩和ケア
 「早期に国が緩和ケアに関わる医療従事者などの教育システムを確立し、がん患者と家族が満足できる緩和ケアを受 けられるような社会を実現する」

3. 在宅医療(在宅緩和ケア)
 「国が、年度内に、すべての市町村で、自分らしく生き抜くために、患者・家族が希望すればいつでも受けられる在宅緩 和ケアシステムを、新たな法整備等によって実現する」

4. 診 療ガイドラインの作成(標準治療の推進と普及)
 「年度内に、国が患者・家族が入った作成普及委員会を設立し、患者家族の 視点の反映された診療ガイドラインの作成と普及を図ることで、科学的根拠に基づいた安全で質の高い医療を全国どこでも受けられるようにする」

5.  医療機関の整備等(がん診療体制ネットワーク)
 「早急に都道府県が国の予算で住民が利用しやすい医療機関ネットワークを 六位一体(患者、立法、行政、医療提供者、メディア、民間)の視点を入れて作る」

6.  がん医療に関する相談支援及び情報提供
 「速やかに全国で、医療提供者とがん経験者等の参画した相談支援体制を国・行政が 構築し、心理・社会的な苦痛のないがん医療を実現する」

7.  がん登録
 「がん医療向上のために『がん登録法』の制定等により早期に国が、日本全国でがん登録を実施できる体制にする」

8.  がんの予防(たばこ対策)
 「たばこ税の大幅増税等によるたばこ対策により、たばこ関連死を削減するとともに、税収等によ り禁煙対策およびがん対策をさらに推進する」

9. がんの早期 発見(がん検診)
 「1秒でも早くどこでも国ががん検診の普及啓発と適正な個別勧奨を強化することで、精度管理された受診 率目標を達成する」

10. がん研究
 「患 者の意向を企画・評価などに反映させたがん研究を行い、国民の命を守ることができる新たな治療やケアを開発するなどの成果を社会に還元する」

 


総合マニフェスト案の最終確定

全人的な医療・ケアを求める声続出
当事者の声を反映する仕組みづくりが重要

 1日目の最後には、がん対策全般におけるビジョンを、参加者全員が議論する全体ワークショップを行いました。参加者からは次々と意見が出され、患者が理想とするがん対策のビジョンを、「総合マニフェスト案」として取りまとめました。

 総合マニフェスト案は、どのようながん医療を理想としてがん対策を進めていくべきか、いわゆるがん対策の理念のような位置づけです。それを100文字程度以内にまとめようというセッションです。まず、患者リーダーが自分たちの体験に基づき、入れたい要素を提案しあいました。

 「がん患者が死亡していくのは国の損失です。それを食い止めなければならないというフレーズを入れたらどうか」「『当事者の声を生かす仕組み』という文言を入れていただきたい」「格差のない、自分の住んでいるところで診療を受けられる国になってほしい」

 「医療者もモチベーションを上げられるように患者が一緒に考えていく方向を打ち出してはどうか」「がんに関心のない人たちにも目を向けてもらうために、『すべての国民』と文言に入れたほうがよい」――。次々と出される意見には、患者・家族の利益だけではなく、がんに関心のない人たちや、他のステークホルダーに配慮した意見も目立ちました。

 議論の末、総合マニフェスト案は「がんになっても不安のない社会を実現するために、当事者の声を反映する仕組みを導入しつつ、すべての国民に、均一化された、最良かつ包括的ながん対策を実現する」にまとまりました。

 最後に、当機構マネジャーの乗竹亮治が、「マニフェスト案の作成は、当事者の声を反映する仕組みを作る大きな一歩。みんなで作るプロセスによって作ったことに価値があったのではないでしょうか」と総括し、閉会となりました。 (ライター 福島安紀)

※肩書きは当時のものです

 

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更新日:2010年07月22日

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