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がん政策サミット2010春 4月11日のレポート

私たちのリーダーシップ
日本医療政策機構 がん政策情報センター センター長 埴岡健一

がん対策の流れとノウハウを身につけよう
議員、行政などを巻き込む「六位一体モデル」が理想

 議員や行政を動かし、がん対策を変えるためにはリーダーシップが不可欠です。当機構の埴岡健一が、がん対策を動かす患者リーダーに求められる知識、ノウハウ、リーダー力について講演しました。

 国のがん対策推進基本計画には、がん患者と患者団体等の担うべき役割として、「医療政策決定の場に参加し、行政機関や医療従事者と協力しつつ、がん医療を変えるとの責任や自覚を持って活動していくこと」といったことが、しっかりと明記されています。

 今、目の前のケアがうまくいっていないと感じるのであれば、それはがんの政策に問題がある場合が多いので、患者自らが声をあげて、変えていくことが大事です。また、患者が中心になって、立法府、行政、医療者、民間、メディアなどを巻き込んで、がん対策を進めていく「六位一体モデル」の流れも普及しつつあります。

 このようななか患者アドボケートに求められるリーダー像の要素について、今から、①知識、②ノウハウ、③リーダーシップ――の3点にわけてお話をしたいと思います。これは皆さんの中にあるリーダーシップを観察しながら整理していったものです。

 まず知識についてです。一口にがん対策といっても幅広いので、「患者相談」「がん登録」「医療者の育成」といった個々のテーマが、全体のどういう枠組みの中で動いているのかについて、それなりの知識を持っておくことが大切です。また、政府のがん予算、都道府県のがん対策予算額、がんの医療費などについても概略を知っておく必要があるでしょう。

議員には要点を絞って伝えるのがポイント

 次に国会議員を訪問する時のノウハウについて、ご紹介したいと思います。準備の良い患者アドボケートの方は、提案する内容を書いた資料を用意しています。この場合、枚数は少なく、字は大きいほど好まれまるようです。

 また議員は非常に忙しいので、大事なことから簡潔に話しましょう。たとえば、30秒以内で要件と目的を伝え、1分で概要(要するに~)を説明します。もし20分ぐらい時間を取ってもらえた場合でも、いつ中断されても大丈夫なよう、大事なことを先に話しておくことをお薦めします。

 最後にリーダーシップです。求められるリーダー力としては、その問題をもっとも解決できる立場にある人を見出してその人に連絡をとることが大切です。患者や家族としての経験をベースに、情熱と論理の両面で語りかけてください。関係者を巻き込む力、巻き込んだ人に達成感を与えるやる気にさせる力も大切です。

 「力があるものには、その力を使う責任が伴う」という言葉があります。嫌になりそうなときがあっても、皆さんにはがん対策を変える力があると認識して、どうぞ粘り強く取りくんでください。 (ライター 福島安紀)


がん対策を考えようPart1・Part2・Part3

マニフェスト案に入れるべき具体的施策とは
効果と実現性の高いものから優先付け

 マニフェスト案にまとめた分野別の目標を実現するには、その目標達成に役立つ施策を選んで実施することが重要です。2日目のグループワークでは、1日目に作成した分野別マニフェスト案を実現するための具体的施策について議論しました。国会議員もグループワークに参加し、がん対策の変革の必要性を訴える患者アドボケートの声に耳を傾けました。

 2日目のグループワークでは、1日目に確定した10項目の個別分野のマニフェスト案を実現するには、どのような施策が優先的に実施されていく必要があるかについて議論しました。のべ10時間以上にわたり、各分野で施策を3本ずつ選択していきました。

国会議員もグループワークに参加

 施策については、「平成23年度 がん対策に向けた提案書~みんなで作るがん政策」に掲載されている140施策(「予算」74本、「診療報酬」29本、「医療制度」37本)を参考にしました。

 これは、国のがん対策推進協議会提案書とりまとめワーキンググループ(以下、WG)が、タウンミーティングやアンケートを通して集めた全国の患者・現場・地域の意見をもとに取りまとめたもので、協議会での審議・承認を経た後、同協議会として厚生労働大臣に提出をされた提案書です。

 この提案書で挙げられている施策のうち、マニフェスト案を実現するにあたって、「効果」と「実現性」がより高い3本を、選んでいく形を取りました。

 各グループでは、患者リーダー自身が司会役も果たしながら、「これは実現してほしい施策だが、法律改正が必要になることから実現性の低さが予想されるため、別のものを優先施策にしたほうがよい」「患者が声を集約すれば、法律も変えられるのではないか」などと、活発な議論を交わしました。

 また、この日は政党・党派を超えた国会議員にも参加を呼び掛けましたが、梅村聡さん(民主党・参議院議員)、柿澤未途さん(みんなの党・衆議院議員)、下田敦子さん(民主党・参議院議員)、菅原一秀さん(自民党・衆議院議員)の4人(50音順)が参加。なかには、患者アドボケートとともにグループワークに参加のうえ、発表役を務める議員の姿も見られました。 (ライター福島安紀)


「患者が求めるがん対策~1600人のがん患者意識調査~」報告
当機構 がん政策情報センター 山口綾香

患者のかかえる問題や課題が浮き彫りに
アドボカシー活動に活用を

 患者団体に所属しているがん患者、経験者、家族、遺族の方を対象に、 2009年11~12月にアンケートを実施し1618人にご回答いただきました。回答者の8割以上ががん患者、経験者の方です。

  今回の調査では、「こころの痛み」「からだの痛み」「経済的な痛み」の3つの痛みが浮き彫りになりました。3つ目の経済的な負担は、この2日間でも何度か 話題にのぼっています。がんの治療にかかった費用の平均は約133万円。治療費が130万円以上かかった人だけをみると、その87%ががんの治療において 「経済的な負担が大きい」と回答しています。また、経済的な理由で一番受けたい治療法をあきらめた方が7%もいたことに衝撃を受けました。 (ライター福 島安紀)


「地域発:がん対策市民共同プログラム~地域から作る好事例~」報告
当機構 がん政 策情報センター 内田亮

好事例を全国へ普及させ命を救おう
PDCA サイクルを考えてモデル化へ

 地域発がん対策市民協働プログラムの目的は、①3年間で3万人の 命を救おう、②地域のがん対策好事例をモデルケースとして全国に普及させよう――この2つです。がん対策は、地域からの草の根的な活動が大きな効果をもた らすと考えています。

 2009年は、がん情報の均てん化、患者や家族の心のケア、患者に寄り添う人材の養成、家族必 携の作成、検診の普及など、12プロジェクト行っています。今後は、プロジェクトをモデル化し普及させることが大事です。

 よ いプロジェクトでは、PDCAサイクル(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)がきっちりと回っていることが観察されま す。ここではそのポイントをご紹介します。Planでは特に、「アウトプット(効果)の管理、アウトプット測定手法の明確化」を意識すること、Doでは、 「マルチステークホルダー(多様な立場の当事者・関係者)と進められるか、リーダーシップとチームワークがあるか」を確認すること、Checkでは、「専 門家や一般市民など第三者による評価、監修」を入れること、Actionにおいては「次年度以降の目標の設定」を立てることが重要になってきます。

 プ ロジェクトの内容はウェブサイトにも掲載されていますので参考にしてください。(ライター福島安紀)


2日間のまとめ

県のがん対策条例作成の動き広がる
地方ブロック別の患者連合を求める機運も

 参加者全員が、マニフェスト案と具体的な優先施策を作成した2日間を振り返って感想を発表。最後に、当機構の埴岡健一が総括を行いました。

 2日間のまとめとして、参加者全員が、グループワークを通じて感じた課題と熱い思いを語りました。マニフェスト案の作成については、「大変だったけれども、得意分野以外のところも勉強できてよかった」「皆さんのお話が非常に参考になったので、もっと議論する時間がほしかった」という意見もあがりました。

 今後、作成したマニフェスト案を国会議員に知ってもらい政党のマニフェストに入るように、地元選出の国会議員に説明をしていくことが重要になります。同時に、「がんに対する知識のなさ、地元の制度の遅れを実感しました。帰って県政、県知事に働きかけたい」「帰ったら、がん対策推進条例へ向けたアプローチをしたい」「県として患者の声をどうやって反映させるか仕組みを作りたい」などと、地元の活動にも役立つとの意見も多数ありました。

患者の力で一歩一歩がん対策は上がっている

 「全国に同じ目的に向かってがんばっている仲間がいることに元気づけられた」「四国、九州などブロック別に患者連合が作れたら、全国の患者の連帯が早く進むのでは」といった声もあがり、患者アドボケートの輪をさらに広げていく機運も高まりつつあります。

 当機構の埴岡は、「がん対策推進協議会が作った提案書の施策リストが、皆さんの要望とも共通点があって、施策の具体的内容をブラッシュアップすることに力を入れていけばいいということが分かったのは収穫の一つです。国会議員の方からも非常に前向きなお話をいただきました。明日は、今回出席できなかった方、いま病室で闘病している方々の気持ちも含めて、この2日間でまとめたマニフェスト案を国政に届けましょう。がん対策の歩みは遅々としている面もありますけれども、皆さんのお話を聞いて、未来は明るいと思いました」と総括しました。 (ライター福島安紀)

 

国会議員挨拶 参議院議員(民主党) 下田敦子さん

母親のがんでがん対策の必要性を実感
議員と行政を活用しよう

 私 は母に育てられました。その唯一頼れる母が40歳で子宮がんになりました。そのとき私は17歳。末期的な状態だといわれて、どうやって生きていったらよい のだろうかと悩み続けていましたが、本人は80歳まで生きました。最終的には大腸がんになり、2009年12月15日に息を引き取りました。母方のおばも 乳がんでしたので、しみじみとがん対策の必要性を感じています。

 また、がん対策基本法の成立に大きく貢献された山本 孝史参議院議員(故人)とは、国会での席が隣同士というご縁がありました。同法成立については、私も厚生労働委員会などを通じて色々お手伝いをさせて頂き ましたが、最後まで休まずに一生懸命に頑張られていて、本当に意志の強い方でした。

 私は、がん対策をしっかりやるた めには、患者さん、ご家族、地域、行政が一緒にならないとだめだと思っているのですが、私の地元の青森県は、大変お恥ずかしいことにそれができていませ ん。一回、知事、あるいは担当者にもお会いし話をしようと思っています。

 どうぞ、議員も行政も活用して、皆さんの活動を広げてください。

国会議員挨拶 衆議院議員(自民党) 菅原一秀さん

がん登録の法的整備必要
がん対策は超党派で推進したい

  父は胆管がん、祖父母も胃がんで亡くなりました。看病を経験した者として、議員になる前からがんの問題に取り組んできた一人です。

 私 は衆議院の厚生労働委員会のメンバーであるのですが、2010年4月9日、がん対策の問題を国会で質問いたしました。論点は山ほどありますが、まずはがん 登録を法的に整備すべきということ、またがん診療連携拠点病院の指定に関しては、要件をきっちりすべきだとお話しさせていただきました。さらに、都道府県 に1カ所、病院以外の相談支援センターを設けてはどうかと意見いたしました。

 それから、病気と闘いながらお金との闘 いを強いられる患者さんの直面する実態にどう対応するのか。外来についても、入院と同様、高額療養費の限度内で支払いが済むような制度に変えるべきです。 がん対策だけは、超党派で取り組んでいかなければなりません。一人でも多くの方ががんとの闘いで命を落とさないように、病気、心の痛みもケアもできるよう に、最善を尽くしていきたいと思います。

国会議員挨拶 参議院議員 (民主党)梅村聡さん

山本孝史さんの言葉が政治活動の原点
患者さんと協働 作業で政策を作りたい

 私は大阪大学医学部を出て、メタボリック・シンドロームの治療・研究を 専門にしていました。

 そんな私が、初めて政治の世界に触れたのは2006年です。当時、大阪の民主党の勉強会で講演をさせていただいたのを きっかけに、民主党の大阪府連の方から「山本孝史さんの地盤を引き継いで来年行われる参議院選挙に出ないか」といわれました。「山本さんは、がんなので来 年の選挙には出られないから」と。

 正式にお断りしようとしたときに山本さんが、「私とあなたでは考え方は違うかもし れない。だけど、あなたは国会議員として医療の問題を改善していくことができるのです」とおっしゃった。迷いましたけど、山本さんのその言葉で、政界に進 もうと決めました。それが私の部屋に山本さんのポスターを貼っている意味であり、私の原点です。

 私は、がんの患者さ んの本質まではわかっていません。ぜひ本音を聞かせてください。皆さんと協働作業で政策を作らせていただきたいと思いますので、これからも末長くおつきあ いさせてください。

国会議員挨拶 衆議院議員(みんなの党) 柿澤未途さん

食道がんの父親を1年間看病
地域で、自宅で最期まで

 2009年1月、かつて外務大臣を務めた父・柿澤弘治を食道がんで亡くしました。亡くなる一年前、食道を全摘する手術で声がほとんど 出なくなったのと同時に、水や食事の飲み込みが困難になったことから、父の闘病生活が始まりました。

 同じころ、私は 不祥事を起こして都議会議員を辞することになったことから、1年間父に付き添って看病することになりました。再発や肋骨への転移を繰り返し、父はやせ衰え ていきましたが、天気の良い日は一緒に散歩し、入浴介助もしました。最後は、緩和ケア病棟に入り、痛みを取り除く治療を受けて楽になったなと思ったら、 あっという間に悪くなり亡くなってしまいました。振り返るとこの1年間は、天の神様が私と父に与えてくれたかけがいのない時間だったと思います。

 父 は恵まれた闘病生活を受けられましたが、患者さんの多くは苦しい痛みを抱えてつらい状況のまま最期を迎えています。これを何とか改善するのが、私の政治家 としての最大のテーマです。「地域で、自宅で最期まで」を実現したい。よりよいがん対策の推進のために、皆さんと共にがんばっていきたいと思います。

※肩書きは当時のものです

<4月10日  4月12日>

更新日:2010年07月22日

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