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がん政策サミット2010春 4月12日のレポート

「がん対策提案書」は、こうして出来た
当機構 がん政策情報センター プログラムマネジャー 天野慎介

8割以上の人が現状の予算・制度に不満足
患者・現場の声を集約した提案書の政策化を

 がん患者アドボケートらが今回、国会議員に提出する「患者が提案するマニフェスト案」の土台となったのが、国のがん対策推進協議会が2010年4月9日に長妻昭厚生労働大臣に提出した「平成23年度 がん対策に向けた提案書 ~みんなで作るがん政策~」です。当機構の天野が、この提案書ができた経緯を国会議員の皆さんに説明しました。

 「平成23年度 がん対策に向けた提案書~みんなで作るがん政策~」は、国のがん対策推進協議会の提案書とりまとめワーキンググループ(以下、WG)が、タウンミーティングやアンケートを通して集約した全国の患者・現場・地域の意見をもとに取りまとめたもので、協議会での審議・承認を経た後、同協議会として厚生労働大臣に提出された提案書です。

 提案書策定にあたっては、各都道府県のがん対策推進協議会委員などに対するアンケートを実施し、全国6カ所でタウンミーティングを開催しました。この結果、約1000人の患者や医療従事者などから累積7500件のご意見や提案をいただきました。これをもとに論点を整理したうえで、140項目の施策をまとめた提案書を作成しました。

予算、診療報酬、制度の横断的な改善必要

 提案書は、がん対策は政策立案プロセスの改善が必要であるということ、そして「予算」「診療報酬」「制度」という3つの側面から横断的に検討すべきであること、そうしたポイントが書かれています。また、がん診療連携拠点病院制度の抜本的改革、全国ながん登録システムの構築も推奨しています。

 また「都道府県庁がん対策担当者アンケート」(43人回答)と「都道府県がん対策推進協議会等委員アンケート」(474人回答)では、現状のがん対策の予算や制度に対して、8割以上の方が「不十分」「不満足」だと答えています。

 患者・現場・地域の声を集約した推奨施策をできるだけ実行すると同時に、いわゆるPDCAサイクル(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)を実行していくことが、実効性を確保して成果につなげるためには必要です。

 患者さんと市民、医療提供者、行政、立法、メディア、民間が六位一体でがん対策をよりよいものにしていくことが今後もより一層重要になってくると考えられます。 (ライター 福島安紀)


1時間で『がん対策』が全てわかる議員勉強会
当機構 がん政策情報センター センター長 埴岡健一

遅々とした改善状況に、テコ入れ必要
患者と現場に効果をもたらす政策を

 最終日には、衆議院第二議員会館の会議室で、国会議員を対象に「1時間で『がん対策』が全てわかる議員勉強会」を開催。最初に当機構の埴岡健一が、がん対策の進捗状況、地域格差などについて解説しました。会場には国会議員15人、議員秘書19人が参加し、患者アドボケートの声に耳を傾けました。

 がん対策推進基本計画では、①がんによる死亡者の減少、②すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の維持向上――を目標にしています。

 がんの死亡率については都道府県で大きな格差があります。この10年間で死亡率が減っている地域もあれば増えている地域もありますので、ご自身の選挙区はどうなっているのか見ていただきたいと思います。

がん対策を国会の場で議論してほしい

 5カ年計画のがん対策推進基本計画は、折り返し点を過ぎ4年目に入りました。厚生労働省は、目標は達成されつつあると言っていますが、現場・患者さんは何も変わっていないと感じています。

 達成されつつあるという計画の目標に、果たして質は伴っているのでしょうか。たとえば、がん診療連携拠点病院に患者・家族の相談窓口を開設したけれども、1カ月間の相談件数がほとんどないところもあります。こういった実態を、いったいどうやって改善していくかが重要です。

 一方で、都道府県ではがん対策を推進するための「都道府県がん対策推進条例」を作る地域が増えています。年度内にも、さらにいくつかの県で新たながん関連条例ができそうです。このような積極的な地域がある一方、まだまだがん対策に消極的な地域もあります。都道府県のがん対策予算の地域格差を見てみたところ、2007年度実績で人口当たり約200倍もありました。

 そんな暗い状況の中で、新しい芽生えも出てきています。それは今日、集まった患者アドボケートの皆さんです。全国的にも輪が広がってきていますし、自ら参加して主体的に取り組んでいく意識が高まっています。がん対策は医療提供者による治療だけでは為し得ません。皆で力を合わせることで日本のがん対策は良くなります。患者・家族の声を議会の中で議論し、政策として実施していくことが重要になってくるといえるでしょう。 (ライター 福島安紀)


マニフェスト案手交式と国会議員との意見交換会

「当事者の声が反映される医療を作っていきたい」
国会議員からマニフェスト案を受け入れる発言相次ぐ

 勉強会の後半では、31都府県の患者アドボケート48人が作成した「患者が提案するマニフェスト案」を、患者アドボケート自身がそれぞれの思いを込めて紹介し、国会議員に手渡しました。参加した国会議員からは、具体的な提案について患者・家族の意見を聞く場面もみられ、活発な意見交換が行われました。

 国会議員との意見交換会では、患者アドボケートが、2日間をかけて作成した提案書を提出しました。

 提案書の構成は、がん対策全般におけるビジョンを描いた文言のほか、10項目にわたる分野別マニフェスト案、さらにそのマニフェスト案を実現させるため、優先的に実施すべき施策を各3本ずつ挙げています。

 この日は、2日間の取りまとめ作業を振り返り、患者アドボケート達が国会議員に向け、順次紹介していきました。

医療費軽減策はすでに検討中

  • 総合ビジョン

「がんになっても不安のない社会を実現するために、当事者の声を反映する仕組みを導入しつつ、すべての国民に、均一化された、最良かつ包括的ながん対策を実施する」
「だれのためのがん医療か、だれのためのがん対策かと問うたとき、当事者の声を反映してこそ、スムーズに機能するがん対策になると考えております。是非全国あまねく均一化されたがん医療が受けられるように、包括的ながん対策をお考え頂けるようお願いします」(発表者:愛知県・花井美紀さん)

  • 放射線療法及び化学療法の推進並びに医療従事者の育成

「医療現場で不足している放射線療法及び化学療法の専門医療従事者の育成体制を整備することにより集学的治療を日本全国へ普及させ、均てん化を実現する」
「一人の患者さんに対して、どのようながん医療が最適なのかを考えていく集学的治療が確立されないということは、患者さんにとっても医療全体から見ても不利益だと思います。ぜひ、集学的治療が推進され、それを実行していけるような医療者の計画的育成をお願いします」(愛知県の花井美紀さん)

  • 緩和ケア

「早期に国が緩和ケアに関わる医療従事者などの教育システムを確立し、がん患者と家族が満足できる緩和ケアを受けられるような社会を実現する」
「近年、『がんになった時から緩和ケア』と言われていますが、周りを見回してみても、がん患者はまだ痛みに耐え苦しんでいます。緩和ケアを受けられる体制が整っていないためです」(山口県の前川育さん)

  • 在宅医療(在宅緩和ケア)

「国が、年度内に、すべての市町村で、自分らしく生き抜くために、患者・家族が希望すればいつでも受けられる在宅緩和ケアシステムを、新たな法整備等によって実現する」
「生活を支える介護保険の指標はADL*(Activities of Daily Living: 日常生活動作)なんです。しゃべれる、歩ける、食事ができるといったADLを保てるがん患者が、適切に介護保険を使えていない現状があります。 私たちは法整備も求めておりますので、ぜひご検討をよろしく お願いします」(千葉県の藤田敦子さん)
*ADL:食事、入浴、移動など日常生活を送るために必要な動作のこと。

  • 診療ガイドライン(標準治療の推進と普及)

「年度内に、国が患者・家族が入った作成普及委員会を設立し、患者家族の視点の反映された診療ガイドラインの作成と普及を図ることで、科学的根拠に基づいた安全で質の高い医療を全国どこでも受けられるようにする」
「全国均一に物事を進めるのは難しいと思いますが、しっかりしたガイドラインなり基準がありますと、それに向かって進んでいくことは可能だと思いますので、ぜひお力添えをください」(沖縄県の三木雅貴さん)

  • 医療機関の整備等(がん診療体制ネットワーク)

「早急に都道府県が国の予算で住民が利用しやすい医療機関ネットワークを六位一体(患者、立法、行政、医療提供者、メディア、民間)の視点を入れて作る」
「今こちらに集まっているのは、患者や遺族です。つまり医療について現場で困っている人が集まっているわけです。議論も非常に熱心に行われました。今この瞬間にもがんの告知を受けて泣いているたくさんの方々のためにも、一日も早く制度ができるようによろしくお願いします」(岐阜県の横山光恒さん) 

  • がん医療に関する相談支援及び情報提供

「速やかに全国で、医療提供者とがん経験者等の参画した相談支援体制を国・行政が構築し、心理・社会的な苦痛のないがん医療を実現する」
「相談支援に患者を参加させてほしい。患者サロンはできているのですが、患者は相談員としては配置されていません。よってボランティアとして活動しているのが現状です」(愛知県の寺田佐代子さん) 

  • がん登録

「がん医療向上のために『がん登録法』の制定等により早期に国が、日本全国でがん登録を実施できる体制にする」「がん登録でデータを集めることは次世代に対して、予防対策・治療・福祉・生活すべての面で大きく寄与することと考えます。がん登録の認知を進めること、推進の方法をいかにあるべきか、この2点を軸に考えました。ご検討をお願いします」(岡山県の宮本絵実さん)

  • がんの予防(たばこ対策)

「たばこ税の大幅増税等によるたばこ対策により、たばこ関連死を削減するとともに、税収等により禁煙対策およびがん対策をさらに推進する」
「熱く議論を交わした結果、なかなか実現されない“大幅増税”ということをあえてお願いしました。禁煙はがん予防に有効であるということも解明されていますので、国民の大事な命を守って頂きたいと思います」(沖縄県の吉田祐子さん)

  • がんの早期発見(がん検診)

「1秒でも早くどこでも国ががん検診の普及啓発と適正な個別勧奨を強化することで、精度管理された受診率目標を達成する」
「クーポンなどにより、がんの検診が進んでいるということは承知しております。しかし、長期的に続けられていけるかということは分かりません。また精度管理についても不十分で、不安のなかで受けている方もたくさんいると思います。どこでも安心して精度の高いがん検診を受けられるような日本になってほしいと思いました」(山梨県の若尾直子さん)

  • がん研究

「患者の意向を企画・評価などに反映させたがん研究を行い、国民の命を守ることができる新たな治療やケアを開発するなどの成果を社会に還元する」
「患者が参加するというのがポイントです。米国では患者が研究デザインや資金の使われ方の審査などをしています。ぜひ、がん研究に患者の声を生かし、未来の命を守って頂きたいと思います」(東京都の桜井なおみさん)

 これに対し、国会議員から「積極的にマニフェスト案にある提案を政策に反映したい」との前向きな発言が相次いだことは注目に値します。また、「平成24年度の診療報酬と介護報酬同時改正に向けて、がんの患者が終末まで在宅で過ごすためのサービスをどうするか議論する必要がある」「難病を含め、高額療養費制度を改善して医療費負担を軽減する方法を、医療制度審議会、厚生労働委員会で検討中」といった具体的な政策立案の進行状況に言及する議員の発言も出されました。参議院選挙に向けた各党のマニフェストにどのように「患者が提案するマニフェスト」が反映され、実現されるかチェックし続ける必要がありそうです。

 なお、この議員勉強会への参加議員(秘書除く)は以下の通りでした(五十音順)。

網屋信介さん(民主党・衆議院議員)、石毛鍈子さん(民主党・衆議院議員)、大河原雅子さん(民主党・参議院議員)、尾辻秀久さん(自由民主党・参議院議員)、郡和子さん(民主党・衆議院議員)、輿石東さん(民主党・参議院議員)、斉藤進さん(民主党・衆議院議員)、佐藤公治さん(民主党・参議院議員)、塩崎恭久さん(自由民主党・衆議院議員)、古川元久さん(民主党・衆議院議員)、皆吉稲生さん(民主党・衆議院議員)、村井宗明さん(民主党・衆議院議員)、山口和之さん(民主党・衆議院議員)、山崎摩耶さん(民主党・衆議院議員)

(ライター 福島安紀)

 

衆議院議員(民主党) 古川 元久さん

もっといろんながん対策ができるはず

 がん対策につきましては、皆さんはまだまだ遅々として進んでいないではないかと思われているかもしれませんし、もっともっと、いろん なことができるのではないかと思っています。

 先日、先端的な医療 現場を見学しましたが、日本がいろんな技術を持っていてもそれが十分活かされていないのではないかと感じました。医療は、今後の経済、社会を支えていく基 盤でもあると思います。

 また、国民病といえるがん対策を促進することが、一人でも多くの命を救い、結果的に多くの国民の QOL(Quality of Life:生活の質)を高めることにつながります。がんについては日進月歩で治療法が進んでいます。そういうものを日本が世界に先駆けて取り入れられるよ うに、皆さんと一緒に努力していきたいと思います。 (ライター 福島安紀)

参議院議員(民主党) 輿石東さん

命を守る 政治の実現へ

 鳩山総理(2010年4月12日時点)が、所信表明演説の中で24回「命を守 りたい」「コンクリートから人へ」ということをおっしゃいました。国民の皆さまに「政権交代して、人の命を守る政治になってよかった」という実感を持って もらうためには、皆さんの10分野に渡るご提案にどう応えられるかが問われているかと思っております。

  2010年4月9日、長野県立こども病院を視察しました。そのとき、院長先生がおっしゃった「学校の先生とお医者さんはぜひ、経済の論理ではなく人間の論 理で教育してもらいたい。いかに命が大事なのか。どういう先生に出会うかによって職業も決まってしまう」という言葉は衝撃的であり示唆に富んでいました。 命を守ることを私どもが今後どうやって実現していくかだと思います。 (ライター 福島安紀)

参議員議員(自由民主党) 尾辻秀久さん

裕福な人だけが先進医療を受けられる仕組みは阻止を

 今日受け取ったマ ニフェスト案については、よく読ませていただき、超党派で真剣に取り組んでいきたいと思っています。

 先進医療が日進月歩で出てきています が、それにはどうしてもお金がかかります。ここをどうするかが今後の大きな課題です。一番心配するのは、日本が誇る国民皆保険が危機に瀕しているというこ とです。

 先進医療が金持ちにしか使えない――その材料にされるの が混合診療です。一方、皆様方が、がんに対する混合診療をお求めになっていることもよくわかります。

 皆様方がお求めになっている混合診療 と、国民皆保険をつぶそうとしている人たちが混合診療を突破口、あるいは、蟻の一穴にしていこうとしている動きとつながったら大変だと率直に思っていま す。これからもお互いにがんばって参りましょう。 (ライター 福島安紀)

※肩書きは当時のものです

<4月10日  <4月11日

更新日:2010年07月22日

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