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「宮城版退院時サポートキット完成披露会」参加レポート

宮城版退院時サポートキット完成披露会を開催 2011年には、初回退院する3000人に配布が目標

入院期間の短縮化が進み、不安を抱えたまま退院する人も少なくありません。患者や家族、医療提供者から成る「患者発・宮城版 退院時サポートプロジェクト」では、そうした患者や家族の不安解消を目指して、療養を支援する「退院時サポートキット」を完成させました。2010年3月 23日、仙台市内で宮城版退院時サポートキット完成披露会が開かれ、約80人のがん患者や家族、医療提供者らが、宮城県内で始まった退院時サポートの話などに耳を傾けました。

 「患者発・宮城版 退院時サポートプロジェクト」は、がんの療養に必要な情報や患者支援団体やサロンの情報を盛り込んだ「退院時サポートキット」を作ることで、医療提供者と一緒に、宮城のがん患者の退院を支援するシステムの構築を目指したプロジェクトです。婦人科がん患者会「カトレアの森」代表の郷内淳子さんの発案に、NPO法人「在宅緩和ケアセンター“虹”」代表の中山康子さん、「石巻ホッとサロン」代表の北川禮子さん、石巻赤十字病院のがん看護専門看護師である菅原よしえさんらが、応える形で実現しました。当機構が、2009年からスタートした「地域発:がん対策市民協働プログラム」の一つとして、進められています。



 完成披露会では、参加者全員に、できあがったばかりのサポートキットが配られました。これを受けて、このプロジェクトの相談役である宮城県がん対策推進協議会会長で宮城県対がん協会会長の久道茂さんは、「日本では、1分間に1人ががんで亡くなり、90秒に1人ががんになっています。しかし、実は、これまでは、行政や地方の施策が患者さんのことをあまりきめ細かくやってきませんでした。がん対策基本法ができてから、がんの患者さんや家族も参加して、がん対策を考えようという動きが出てきました。このプロジェクトが作ったサポートキットはこれまでなかったものですが、患者さんたちにとって非常に大事なサポートです。今日は、貴重な資料を手に入れたわけですから、県内、そして全国に広めていただきたい」と話しました。


 また、プロジェクトの中心になった郷内さんは、サポートキットへ込めた願いを次のように語りました。「宮城らしさ、宮城の患者さんが求めているのは何かを考えてサポートキットを作りました。普段の生活に役立てていただければと思います」

サポートキットには宮城の患者団体、サロン、往診医の情報も

 宮城版 退院時サポートキットは、①『在宅での療養生活のガイド編』、②療養手帳『あゆみ』、③『食事に困った時のヒント』(発行:財団法人がん研究振興財団)、④『あなたの家にかえろう』(発行:「おかえりなさい」プロジェクト事務局)の4冊で構成されています。『在宅での療養生活のガイド編』と『あゆみ』は、当プロジェクトが、患者や家族、医療関係者の意見なども聞きながら独自に作成したものです。


 『在宅での療養生活のガイド編』には、「納得して、充実したがん治療を受けるためのヒント」といった具体的なアドバイスや治療の知識、県内のがんの相談窓口、在宅緩和ケア支援センター、セカンドオピニオンが受けられる病院の一覧表、がんの往診ができるクリニックや病院、訪問看護ステーション、介護タクシーのリストなど、退院後に必要な情報が詰まっています。また、患者・家族の心のサポートとして重要な県内のがん患者会・家族会、サポートグループ、がん患者サロンのリストや活動の内容も盛り込まれているのが特徴です。



 一方、『あゆみ』は、受診の記録や体調などを自由に書き込める小冊子です。在宅緩和ケアセンター“虹”代表の中山さんは、「退院した後、通院している方々がさまざまな問題を抱えたときにどうしたらよいかわからないというのが今までだったと思います。そうならずに患者さんや家族が自分たちの方法を見いだせる道筋を少しでも作りたいというのがこのプロジェクトの目的です。たとえば、『あゆみ』の“日々の体調のおぼえ書き”の空欄には、自由に気になるところを書き込めます。よく眠れた方法とか、食欲が出た工夫という皆さんの日常を書いておくと、自分独自の工夫を見つけることができます」と、サポートキットの使い方の例を挙げました。


 この日の完成披露会では、読売新聞社社会保障部記者の本田麻由美さんが、「がんと私~みんなの支えが生きるパワー」と題して講演。本田さんは、治療法の選択に悩んだ自身の経験やがん対策を動かす活動をしてきた体験を話し、次のように強調しました。

 「私が乳がんの告知を受けたのは34歳のときでした。告知を受けた後は、自分ががんであることを受け入れられないまま物事が進みますし、進めざるを得ませんでした。その間、私の生活はどうなるのと思っても、病気以外のことを誰に相談したらよいかわからない。治療法の選択、後遺症、心の問題(不安、恐怖、喪失感)、仕事や結婚、出産、医療費負担など社会的な問題など、いろいろな問題が一気に押し寄せてきます。自分だけでは抱えられませんので、周りのサポーターをうまく活用しましょう。患者経験者、友人、同僚がサポーターになることもあります。宮城県はそういう素地があると思いますし、みんなで盛り上げていただければと思います」


 続けて、当センターの埴岡健一が「がんと向き合うみんなのチカラ~地域発:がん対策市民協働プログラムについて~」をテーマに講演を行いました。その中で、埴岡は、次のように話しました。「われわれが宮城県のプロジェクトに注目しているのは、患者の立場の方々に、様々な立場の方々が協力しているというところです。宮城では、プロジェクトだけではなく、患者の動きに議会の方が反応したり、行政の方や医療従事者の方々が協力したり、いろんな意見を集約する仕組みができつつあります。精神的なこと、身体的な苦痛、経済的な苦痛などが解消されていませんし、多岐にわたる悩みがあるのが現状ですが、全国で、それを解決するためのアイデアや実例が出てきました。宮城の退院時サポートキットプログラムがしっかりと進んで、宮城のためにもなり、全国にも広がっていくとよいですよね。また、宮城では、このプロジェクトをきっかけに、ほかの施策もみんなで一緒に取り組んでいこうという動きが広がってくれればと思います」。

医師とコミュニケーションを取る道具としても利用を

 完成披露会では、最後に、医師とのつきあい方や患者サポートの場づくりについて、パネルディスカッションが行われました。


 パネリストの一人として登壇した「石巻ホッとサロン」代表の北川さんは、行政の行っていた在宅ホスピスケア連絡会の一環として、がん患者が集まる「ホッとサロン」を自宅と石巻市立病院で開いています。2010年4月からは、東松島市の患者さんの自宅でも週1回、「ホッとサロン」を新たにスタートさせました。北川さんは、「私たちは、来た方が居心地のよい場所づくりをし、一人ひとりの思いが実現できるようにと考えています。それから、食生活の支援。できるだけ自然のものを使って楽しく食べられるということを心がけています。この間も、普段はあまり食べられないのに、みんなで楽しく食べたら食が進んだとおっしゃった方がいました。また、行政の支援を受けていることもあり、毎年研修医の方が10人以上、看護学生さんたちが09年は16人いらっしゃいました。お医者さんとの関わり、病院での生活をお話しできるよいチャンスだと思っています」と、サロンの活動を紹介しました。



 宮城県では、09年11月に、患者団体と拠点病院の支援センターの担当者の交流会を開催した際、患者団体から、全拠点病院に患者サロンを作ってほしいと提案したそうです。

 さらに、医師とのコミュニケーションの取り方について、本田さんは、「患者のほうも、こういうときにはこういうふうに質問したらいいよというノウハウは作ったらいいと思います。聞き方集、用語集のようなものをぜひ作っていただきたいですね。アメリカの患者団体は、ホームページに、こういうふうに聞くと医者はわかりやすいというノウハウを載せています。最近は、患者さんと話すロールプレイが医学部の授業に入っています。そういうところに患者のグループが参加して変えていってほしいと思います」と提案しました。 これに対し、埴岡も次のように付け加えています。


 「お医者さんとゆっくり話をしたいとき、たとえば、先生、比較的時間があるのはいつですかと聞いて別の時間を取ってもらうのも手です。国立がんセンターが、拠点病院で患者さんに配布する『患者必携』を作りました。この患者必携や今回のサポートキットなどのツールを診察のときに持って行って、『先生、ここにこういうことが書いてありますけど』などと、目の前で開いて一緒に読みながら話すと、コミュニケーションが取りやすいと思います」。

 同プロジェクトでは、10年度、がんの治療を受けて初回退院する患者300人にサポートキットを無料配布する予定です。キットを使った人たちの声を集めて改訂したうえで、11年には、宮城県内の拠点病院を中心にがん患者3000人へサポートキットの配布を目指すことになっています。


 また、10年度、2カ所の病院で、退院前にがん患者や家族の相談に乗り、サポートする「退院支援システム」を整えてもらえるように研修の支援も行っていくそうです。サポートキットや退院支援システムが宮城から全国に普及すれば、患者さんの退院後の不安も軽減されていくことでしょう。

(ライター 福島安紀)

更新日:2010年04月30日

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