「働き世代のがん患者・体験者に対する就労・雇用支援プロジェクト」参加レポート
がんと一緒に働こう!~治療を受けながら働くコツ~ 全国キャラバンがスタート
がんになっても今まで通り働き続けたいと願っているのに、降格や配置換え、退職を余議なくされる人は少なくありません。そんな体験者の一人である桜井なおみさんらの「CSRプロジェクト」事務局が、全国キャラバンのオープニングとして、2010年5月1日のメーデーに、東京で就労問題フォーラム「がんと一緒に働こう!~治療を受け続けながら働くコツ~」を開催しました。今回のフォーラムは、当日本医療政策機構が実施する2010年度「地域発:がん対策市民協働プログラム」のひとつ、「働き世代のがん患者・体験者に対する就労・雇用支援プロジェクト」の一環として開かれたものです。約180人が来場し、がん患者が直面している就労問題の打開策を探りました。
「私は2004年に乳がんになり、その後、職場復帰したものの元の会社は退職しました。辞めてみてわかったのは、社会とのつながりはとても重要で、仕事はメンタル面に大きな影響を与えているということです」
5月1日のフォーラム「がんと一緒に働こう!」では、最初に、CSRプロジェクト(CSRは、Cancer Survivors Rectuiting=がん経験者たちの就労、の意)代表者の桜井なおみさん(HOPE★プロジェクト理事長)が、自身の経験を交えて就労問題に悩むがん患者の実態を講演しました。CSRプロジェクトは、がん経験者の就労問題を考え解決策を探るプロジェクトです。2008年、東京大学・医療政策人材養成講座4期生の研究班の一つ、「がん患者の就労・雇用に関する調査班」(桜井班)として、調査研究と問題提起を開始しました。
がん体験者の人材登録・派遣を開始
桜井さんは講演の中で、桜井班として働き世代のがん経験者に対して実施したアンケート調査結果(2008年3月、有効回答403人)を説明。この調査によると、回答者の75.9%(306人)が「今の仕事を続けたい」と希望。しかしながら、仕事を続けたいと希望した人のうち、31.0%(95人)ががんと診断された後に職場が変わっていました。なかには解雇された人も14人いました。さらにがんと診断された後の収入に関しては、全回答者の38.7%(156人)が「減った」と回答しました。
また、「収入を伴う仕事をしていない」と回答した人でも就労への意欲は高いことも分かったといいます。働き方としては「パート希望」が43.9%で、「正社員希望」が24.4%でした。希望する仕事は、「これまでの経験を活かした仕事」(51.6%)に次いで、「病気の経験を活かした仕事」(39.3%)で、がん経験者が病気の体験をいわば“資産”として社会に活かしたいと考えていることも浮き彫りになりました。そのうち「病気の経験を活かした仕事」を選択した人のうち9割がそのための技能訓練・研修の受講を希望していました。
こうした調査結果を受けてスタートしたCSRプロジェクトの活動の柱は、①かえる、②つなぐ、③つくる――の3つです。
桜井さんは、「かえる」「つなぐ」について、「がん患者が働き続けるためにもがんのイメージを変えたい。がん患者にも、働く権利がきちんとあることも知ってほしいし、全国の患者会や経験者の人たちと就労をテーマにつながっていきたいと思います」と強調しました。
「つくる」活動の一つとしては、株式会社を設立。フォーラムの席上、医療や福祉分野の人材派遣を行う企業の協力を得て、がん体験者に対する仕事の斡旋や紹介を行っていくことを発表しました。
神戸、盛岡、名古屋でもフォーラム開催予定
フォーラムの後半には、「働き世代のがんを考える」をテーマにパネルディスカッションが行われました。パネリストの一人として登壇したクレディセゾン人事部長の武田雅子さんは、自身も乳がんになった経験から、会社に対して、病気療養中や職場復帰時に短時間勤務を認める制度を提案したことを紹介しました。
プロジェクトのメンバーで社会保険労務士の近藤明美さんは、「中小企業などにも傷病休職制度の整備を後押しするためには、休職期間は社会保険の支払いを免除したり、雇用維持のための助成金を出すなど、経済的支援や法制度の改革も必要ではないでしょうか」と指摘しました。
CSRプロジェクトでは、この日に合わせて、がん患者が働き続けられるコツをまとめた書籍『がんと一緒に働こう!―必携CSRハンドブック』(合同出版)を発刊しています。
就労問題フォーラムの全国キャラバンは、今後、2010年7月4日兵庫県神戸市で「がんと心のケア」、10年9月5日岩手県盛岡市で「医療者とつくる働き方」、10年11月28日愛知県名古屋市で「乳がん治療と経済的負担」をテーマに開かれます。同プロジェクトでは、社会保険労務士などが、がん患者の就労相談に乗る就労サポートプログラムや、企業・団体に対するがん体験者継続雇用支援プログラムも展開。問題提起するだけではなく、がん患者の就労問題を実際に解決するプレーヤーとしての活動にも注目が集まっています。
今回のフォーラムの最後には、CSRプロジェクトの方針として「CSR宣言2010」が発表されました。①まず、患者個人が今日から変わってもらい、②そこから少しずつ企業の意識にも変化を促し、③最終的に社会全体を変えていこう、という内容です。「まずは①の患者自身が変わることから始めましょう。皆さん、今日からでもぜひ実践してみてください」と桜井さんは来場者に呼びかけ、フォーラムは幕を閉じました。
(ライター 福島 安紀)
[関連サイト]
-
働き世代のがん患者・体験者に対する就労・雇用支援プロジェクト:
http://ganseisaku.net/impact/gan_coproduction/2010/zenkoku/zenkoku.html -
キャンサー・ソルーションズ「Canなび」:
http://kibou.jp/csr.html
更新日:2010年06月04日





