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NBCC(全米乳がん連合)「アドボカシー年次総会」参加レポート

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)学術集会 研修ツアーレポート(1)

患者アドボカシーが盛んといわれる米国において、患者アドボケートは実際にどのような研修を受け、どのような活動を行っているのだろうか。それを学ぶため2011年4月30日から5月3日に、全米乳がん連合(National Breast Cancer Coalition、以下NBCC)が開催したアドボカシー年次総会(Annual Advocacy Training Conference、以下年次総会)に参加した。日本へのヒントがあれば幸いだ。

NBCCが実践する戦略的な「草の根アドボカシー」

 NBCCは、乳がん撲滅を目指す米国でも有数のアドボカシーグループだ。数百の団体、数万の個人と連携し、乳がん研究推進や医療の質の担保を提言して実現するべく、アドボケート育成に力を注いでいる。2010年9月20日には、2020年1月1日までに乳がんを撲滅することを米国政府に訴えた2020年乳がん撲滅宣言(Breast Cancer Deadline2020)を発表している。1990年ごろから乳がん研究分野に累計25億ドル以上の新たな予算が投入されたが、NBCCがその実現に大きな影響を与えたとされる。また、NBCCは、低所得層の女性が適切ながん医療を受けられる仕組みを構築したことにも貢献したと自負している。NBCCは現在までに、こうした成果をもたらした1万人以上のアドボケートを養成・排出している。

 こうした成果を生むためのアドボカシー活動が、どのように行われ、アドボケートがどのような研修を受けているのかを学びたい。そう思って年次総会に参加した。

 年次総会は4日間。3日間は基調講演と分科会と最終日の準備で構成される。最終日の4日目は連邦政府議員を訪問して推奨施策を伝える「ロビーデイ」だ。19回目となる2011年の年次総会には、全米から800人を超えるアドボケートが集結し、世界12カ国からも参加した。日本からの参加者は筆者も含め3人だった。これまでにも日本から患者アドボケートが参加している。

がん研究の知識を持ち、実践に役立てるアドボケート

 基調講演は、500人は収容できそうな大ホールで行われる。最新の乳がん研究の成果を共有する内容から始まり、現在NBCCが目標として掲げている「乳がん撲滅宣言」、すなわち2020年までに乳がんそのものを消滅させてしまうための方法が議論される。それまでに乳がんが撲滅できるとは、にわかには信じがたい目標設定だが、「これはただのスローガンではない、実現のために研究者とともに歩んでいる」と繰り返される。目標達成の方法としては「対話の変革(Change the Conversation)」という言葉が多く用いられる。がん医療のイノベーションや転移予防、公共政策などの分野で、乳がん撲滅のための変革をもたらすアイデアを、患者と研究者やその他の立場の関係者がまったく新しい発想で目標意識を強くもち、対等な立場で議論を尽くすことの重要性が強調される。

 パネリストには、研究者や政府機関関係者、ジャーナリストなど乳がん対策の有識者に加えて、NBCCの研修を受けた先輩アドボケートが並ぶ。がん研究や医学に関する内容についても、研究者と患者アドボケートとが対等に意見を交わす。参加者は真剣にメモをとり、時折、感嘆の声をあげてパネリストを称賛する。研修を受けて専門家と対等にがん研究に関する議論をできるリーダーがいることで、参加者全員が当事者意識をもち、こうしたテーマを真剣に考えるようになるのではないだろうか。

 学術的な内容のセッション分科会は、いくつも並行して、30人規模の小さな部屋で行われる。全日程の中で3回設けられており、(1)乳がん科学研究の多角的アプローチ法(2)2020年の乳がん撲滅に向けてどのように仕組みを変えるか(3)乳がん撲滅を進めるアドボケートに必要なツール開発――というテーマで、計32本の講義がある。筆者は政策参画の分野から、(1)社会変革理論(System Change Theory)(2)連邦政府議会のイロハ(Nuts and Bolts of Congress)(3)効果的な提言活動の戦略Strategies for Effective Lobbying)--の3つに参加した。

 一つめのセッションでは、社会の仕組みを変えるために必要な手順や変化などについて、基本を簡潔に教わった。自分たちもさっそく使ってみようと思わせるように分かり易く教えてくれる。二つめでは、米国議会の仕組みの基礎を学んだ。また、NBCCが注目している政策立案のための協議会や個別の議員名のほか、NBCCのオバマ政権下の医療改革法成立への貢献や、防衛費の中で乳がん研究費を獲得した経緯などが紹介された。

 最後のセッションでは、議員への効果的な働きかけ方について、受け手である議会の政策秘書、プロのロビイスト、実績をあげた経験がある先輩アドボケートらの講師から教わった。自己紹介は簡潔に、科学的根拠を交えて伝えたい内容を伝える、仲間がいれば役割分担をして、短い時間を有効に使うようにといった、とても具体的で役に立ちそうな説明があった。その後、4つのグループに分かれ、それぞれ講師を迎えてロールプレイングが行われた。

更新日:2011年08月08日

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