四国におけるがん情報サービス向上に向けた地域懇話会 現地レポート
ブロック単位でがん対策の取り組みがはじまる
四国4県のがん患者団体が県境を超えて交流を深め、全体のがん対策を底上げしていこうと、2010年5月に「四国がん対策連携協議会」が設立され、全国でも珍しい「ブロック単位」の取り組みが始まりました。第1弾のイベントとして10年11月14日、香川県高松市で「四国におけるがん情報サービス向上に向けた地域懇話会」4県(香川県、愛媛県、徳島県、高知県)合同タウンミーティングが開かれ、各県の患者会代表と県担当者らが参加し、それぞれの県の現状や課題を語り合いました。懇話会の内容を中心に、四国の新たな動きを紹介します。
「四国がん対策連携協議会」は、安岡佑莉子さん(高知県・一喜会会長)の呼びかけで発足しました。安岡さんは国のがん対策推進協議会委員も務め、がん対策に大きな都道府県格差があることを早くから実感していました。「四国はまだまだ遅れていて、各県とも隣の県でどんな対策が行われているかも知らず、何をどうすればいいのか分からない状態。互いに知恵を出し合い情報交換を密にすることで、遅れている地域を引っ張り上げたい」と、均てん化に向けた協働の狙いや必要性を語りました。
08年4月には「第4回がん患者大集会」の準備会として、四国4県から成る初のブロック会議が高松で開催されました。08年9月には、四国のがん診療連携拠点病院の相談・支援窓口について初のアンケートが実施され、こうした連携が協議会に発展しました。今後は持ち回りで定期的に協議会やシンポジウムなどを開き、全体のレベル向上を目指します。安岡さんは「四国ができたら中国、九州にも広がるはず。47都道府県が国にばらばらに意見を上げてもまとまらないが、ブロックなら患者の声が届きやすいのではないか。期待している」と語りました。
地域懇話会は、国立がん研究センターがん対策情報センターの共催で県ごとに開かれ、今回が18回目となります。高知県(07年2月)、愛媛県(08年10月)は開催済みですが、香川県でのブロック単位の開催は初めてとなりました。
まず、埴岡健一(当機構がん政策情報センターセンター長)が「日本のがん対策と四国の現状~各地の好事例から学ぶ~」と題して講演しました。埴岡は、四国の連携を「ほかにはない取り組み」と評価したうえで「香川県以外の3県にがん対策推進条例ができたし、がん募金も徳島県で始まった。4県そろえばすばらしい」とコメントしました。また「四国でできること」として「医師不足は、実は偏在が大きい。地域で医療資源マップをつくるなどして必要な数を知り、最適化を」「ワンストップ型の相談センター設立に国の予算がついた。2分の1補助事業ではあるが、実例を作るためにぜひ手を挙げて」などとアイデアを例示しました。
4県がそれぞれ特色ある活動を報告
続いて、4県の患者会代表と県担当者が取り組みを紹介しました。
行政側は「2010年8月、総合相談窓口として『徳島がん対策センター』を新設した」(徳島県庁)「10年4月施行の条例の理念は『県民総ぐるみ』。がん対策推進員の1万人養成やピア・サポート充実に力を入れる」(愛媛県庁)――と施策を説明。患者側は「患者・家族の『おしゃべり会』を07年6月から開いている」(二島多恵さん・香川がん患者おしゃべり会代表)「患者・家族の経済的負担軽減などを目的に募金を立ち上げた」(徳島県/勢井啓介さん・AWAがん対策募金理事長)「09年7月にがん患者支援プロジェクトを発足、『心のケア支援相談員』を育成している」(安岡さん)――などの活動を紹介しました。
また、愛媛県の松本陽子さん(愛媛がんサポートおれんじの会理事長)は、2010年夏実施した「患者満足度調査」で、「多くの患者が不安や経済的な悩みを抱えているが、実際に拠点病院の相談支援センターを利用した人は1割未満」との結果を発表しました。利用者数のあまりの少なさから「患者同士の相談ができる場所を『院外』に設置するのも一案」と提言しました。
現在、すべてのがん診療連携拠点病院(以下、拠点病院)に「相談窓口」はあるものの、敷居が高かったり、人員・周知が不十分で、せっかくの窓口が機能していない施設は多くあります。今回、国立がん研究センターの発表でも、四国の19拠点病院のうち四国がんセンター(愛媛県松山市)だけが、1日平均約20件以上と突出して多くの相談を受けていますが、12施設は1日1件以下にとどまっていることが明らかになりました(09年6~7月調査)。「患者が望む相談窓口」には程遠い実態がうかがえます。
各県、相談事業から取り組み
パネルディスカッションでも、拠点病院の「院外」の相談窓口の必要性について話題が集中しました。
国の2011年度予算のメニューに挙がった「都道府県相談センター」について、埴岡が「活用予定はあるか」各県担当者に質問しました。香川県、愛媛県は「まず現在の(相談支援センターの)機能充実が先」、高知県、徳島県は「既にあり、新たな設置やくら替えは考えていない」と、4県とも当面、様子見の姿勢を示しましたが、今後の検討が期待されます。
一方、最後の質疑応答では、フロアや患者側からは「拠点病院にみんなが相談に行けるわけではない。他の病院にも相談窓口が欲しい」「患者は、病院には言えないことがたくさんある。医療機関とは違う受け皿が絶対に必要」など、院外の相談の場を求める声が多く出ました。
「日本中どこでも、がん対策のまず第一歩は『相談』。患者・家族はみんな不安で、怖くて、情報を探している。なのに、その心に寄り添い、ケアができる相談の場があまりにも少ない」と、安岡さんは憤りを見せました。
特に四国は、概して患者・家族が遠慮がちで、セカンドオピニオンさえ言い出せなかったり、逆に怒り出す医療提供者もまだいます。拠点病院が一つかゼロの地域では、簡単に転院もままなりません。そうした現状から、「相談・支援の充実」が4県共通の最優先課題となっていることが、懇話会を通じあらためて浮き彫りになりました。
松本さんは「懇話会は、他県の施策や好事例を知る貴重な機会となった。これをいかに自分の県で取り入れ、行政や医療提供者との協働に生かしていくか。持ち帰って各県で『次』につなげていくことが大事」と総括しました。一歩を踏み出したばかりではありますが、四国の協議会が全国のがん対策推進の一つのモデルになることを期待したいと思います。 (ライター 早瀬昌美)
更新日:2010年12月10日





