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欧州の「世界がんサミット」参加レポート

「世界がんサミット」に出席 アドボカシー活動の国際連携を確認

 2009年8月24日から26日にかけて、ダブリン(アイルランド共和国)に、約60カ国、500人超のがん対策関係者、アドボケートが集結した。ランス・アームストロング財団が開催した「世界がんサミット(Livestrong Global Cancer Summit)」である。

 世界がんサミット(Livestrong Global Cancer Summit)*11日目のセッションで、ランス・アームストロング財団*2(Lance Armstrong Foundation. 以下LAF)のチェアマンであり、創設者のランス・アームストロング(Lance Armstrong)氏は、現アメリカ政権の副大統領ジョー・バイデン(Jo Biden)氏との会話を紹介した。バイデン氏が上院議員だった頃、がん対策の推進を求めて面会したときのエピソードである。がん対策の必要性やLAFへの支援を訴えるランスに対し、バイデン氏はこう切り返したという。

開会の挨拶をするランス・アームストロング氏
「ランス。君の言うことはよくわかる。しかし、次から次へとがん患者団体が押し寄せてきて、うちが大事、うちが大事、と繰り返しているんだ。これでは政府は誰の話を聞くべきか、わからない」――。

 「鉄のカーテンを乗り越えることが重要だ」、ランスは会場で続けた。団体同士の枠組みを超え、国の枠組みを超え、先進国新興国の壁、貧富の壁を越え、世界のがん対策推進のために手を取り合う。「それが今日この場に我々が集まった理由なんだ」。

 「世界がんサミット」には、アドボカシー団体を中心に世界各地から多岐に渡る団体が招待された。米国対がん協会(American Cancer Society -ACS)会長のジョン・セフリン(John Seffrin)氏、国際対がん連合(International Union Against Cancer -UICC)会長のデービッド・ヒル(David Hill)氏をはじめとしたがん関係団体の代表者。政府関係者としては、開催地アイルランドの厚生大臣メアリー・ハーニー(Mary Harney)氏、ナイジェリア前大統領でありアフリカ連合議長を務めたオルシェグン・オバサンジョ(Olusegun Obasanjo)氏などが参加した。

 しかし何と言っても、もっとも注目されるのは、世界中から集まったアドボカシー団体の面々である。先進国新興国を問わず、アドボカシー活動によって、がん対策やタバコ対策の推進に取り組む、ローカルかつグローバルな団体が集結し、3日間に渡って熱い議論を繰り広げた。日本からは、日本医療政策機構のほか、がんの子どもを守る会、グループ・ネクサス、ジャパン・ウェルネスの3つのアドボカシー団体が参加した。 開催前日のレセプションにはじまり、1日目はパネルディスカッションが中心、2日目は会場全体でのワークショップ、3日目は具体的なアクションの確認という終日のハードスケジュールのなか、特に強調されたのが次の3点である。1点目は、がんのスティグマ化(負のイメージや社会的な烙印)を終焉させ、がん生存者を増やしていくこと。2点目は、国際的な草の根運動を共に作り出していくこと。そして最後に、国際的なリーダーと協働することで、がん対策の優先順位を上げていく点である。

 さらに、ことあるごとにパネルディスカッションや参加者の間で話題に挙がり、日本にとって示唆深い視点としては、次の2点が挙げられる。ひとつは、タバコ対策である。がんによる死因のうち5分の1が、タバコを遠因*3とするものであるというデータも紹介された。会場内では、至るところで議論が活発化していたアドボカシー団体や各国政府が、タバコ産業といかに戦っていくかという議論も活発に行われていた。もうひとつは、新興国支援である。2020年には、世界のがんの62%は新興国で発症する一方で、現在において、予算や施設などのがん対策資源のうち5%のみが新興国に充当されているというLAFからの発表をはじめ、がん対策における新興国支援の重要性が強調された。 全体を通して感じ、また、求められていると痛切したのは、日本としていかに国際社会に貢献できるのか、という文脈である。タバコ対策においては、世界第2位のタバコ産業(2006年 利益ベース)を抱える日本にとっては、耳の痛い話であり、タバコ規制枠組条約(FCTC*4)の順守が望まれる。がん対策における新興国支援についても、国内のがん対策の推進もさることながら、先進国としての貢献が求められよう。さらに言えば、日本モデルを積極的に情報発信し、国際化していくことで、国際貢献につながる可能性もある。がん対策推進基本法に組み込まれた患者参画の精神や、がん対策推進協議会によるがん対策予算提案などは、世界に冠たる好事例と言えよう。

 カナダのアドボカシー団体がん対策キャンペーン(Campaign to Control Cancer*5)のプログラムの責任者であるパット・ケリー(Pat Kelly)氏は問いかける。「渡り鳥であるカナディアン・ギース(カナダ雁)は、常にV字型で群れになり飛行するのを知っていますか。先頭は常に一羽で、その一羽が風よけとなり、残りの群れを飛びやすくするのです。しかし、先頭の一羽は、自然に入れ替わります。誰が合図をするわけではなく、常に誰かが先陣を切りながら、みんなでゴールを目指すのです。がん対策も同様です」――。 コラボレーション(協働)という言葉が、活き活きと現実味を帯びた3日間だった。

アドボケートたちが想い想いのメッセージを会場入り口に書き込んだ

(市民医療協議会 企画担当 乗竹亮治)




 


 

更新日:2009年08月24日

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