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UICC(国際対がん連合)「世界がん会議 たばこ対策セッション」参加レポート

たばこ対策の先進事例紹介

 UICC(Union for International Cancer Control:国際対がん連合)は、1933年に結成された、がん克服のための国際連帯組織で、近年、その主目的を、がん研究の促進から、がん予防と患者支援に移行しつつあります。がんとたばこの因果関係は各種研究から明らかであり、今回の世界がん会議においても、たばこ対策が4大テーマのひとつとして取り上げられました。前回の世界がん会議においても、たばこ対策はテーマのひとつであり、がん対策において、ひいては、健康政策全般において、いかにたばこ対策を促進し、たばこによる健康被害を防いでいくかという課題が、継続的かつ世界的なテーマであることが伺い知れます。

 連日のたばこ対策に関するセッションに参加し感じたことは2点ありました。ひとつめは、各国の先進事例が、詳細化し、ますます進歩しつつあること。ふたつめは、今回の会議開催国である中国におけるたばこ対策の進展です。このふたつの視点から会議をみていきましょう。

 ひとつめの先進事例として、特に注目を集めたのは、2012年に施行されるオーストラリアのたばこパッケージの簡易化を義務付けた規制です。規制される前のたばこのパッケージは、ロゴや動物のマーク、様々な色遣いによって美しくデザインされたものがほとんどですが、オーストラリアでは、文字のデザインさえも禁止したたばこのみが販売できるようになります。例えばそれは、茶色の小箱に、明朝体のような簡素な文字で、たばこのブランド名のみが書かれるというようなイメージです。10年に成立し、12年からいよいよ施行されるこの規制の効果に各国の関係者が期待を寄せています。

 このようなたばこ対策における先進事例が共有される一方で、たばこ対策の潮流に逆行するようなたばこ関連商品の動きも様々なセッションで紹介されました。例えば、たばこ税の値上げなどによって生じた、価格の上昇感を抑えるべく開発された、少ない本数入りのたばこや、たばこの箱へのデザイン規制や健康喚起文の影響を避けるべく、一本ずつのたばこに、より凝ったデザインや色遣いがなされている商品などです。これらの動きは、さらなる健康被害の増大を招く恐れがあるため、オーストラリアの対策を手本に、日本でも注意して見守る必要があるでしょう。

 ふたつめの注目点である中国の事例では、ビル&メリンダ・ゲイツ財団やブルームバーグ財団などの国際的機関が、活発に賛助を行い、中国のたばこ対策の推進に貢献している姿が明らかになりました。各地の省政府がたばこ販売会社を保持している中国において、たばこ対策の推進は地元政府、中央政府などとの難しいバランスを取りながら進められてきました。2009年のたばこ関連商品の中国全土での歳入は500億人民元(約6,200億円)にのぼり、たばこ対策の進展にも関わらず、08年から12%も上昇していることが発表されました。

 この巨大なたばこ市場を制圧すべく、国際機関が集中的にたばこ対策支援に乗り出し、地元の市民団体や学術団体と協力しながら、時には中央政府と折衝、時には各地の省政府と折衝するなどして、たばこ対策を推進している姿が紹介されました。このような中国におけるたばこ対策の好事例として、06年末時点で、国内154都市において、何らかのたばこ規制が施行されたことが取り上げられ、特に、オリンピックや国際会議、国際大会を契機に、たばこ対策を一気に前進させる傾向があることが発表されました。

 とりわけ先進事例として注目を集めたのが、広東省広州市のケースです。広東省の省都である広州市では、1995年にたばこ対策協議会が設立され、同年、市政府により公衆での喫煙規制条例が制定されました。96年には、屋外のたばこ関連広告が撤去されました。そして2010年9月1日、市をあげての包括的なたばこ規制条例が施行されます。このような先進事例においても、国際的な財団が重要な役割を果たしており、たばこ対策が、もはや各国の事情ではなく、世界をあげて連帯し推進すべき政策テーマであることが読み取れるでしょう。広州では、10年11月に第16回アジア大会が開催されます。国際的な大会に合わせてたばこ対策を推進するという中国の戦略が、ここからも垣間見られます。

 WHO(World Health Organization:世界保健機関)やUICCでの公式発表を見るまでもなく、たばこ対策が世界的な政策テーマとなって久しくなりつつあります。先進国の一翼を担う日本は、どのような先見性を示し、世界に貢献していけるのか。今回の世界がん会議のテーマには、がん対策の文脈で「予防できるものを予防しよう」というものがありました。たばこ対策自体は、健康それ自体における巨大なテーマでありますが、同時に、がん対策の側面から見ても、最も予防に貢献できる対策のひとつでもあります。日本にとって、日本のがん対策にとって、予防できるものを予防し、救える命を救うために、たばこ対策の重要性をあらためて認識させられました。(日本医療政策機構事業企画開発ユニット 乗竹 亮治)

[関連サイト]

■UICCホームページ(英語)
http://www.uicc.org/

■UICC2010年世界会議(英語)
http://2010.worldcancercongress.org/

■UICC世界がん宣言(英語)
http://www.uicc.org/declaration

■WHO アクションプラン2008-2013(英語)
http://www.who.int/nmh/publications/9789241597418/en/index.html

■たばこ対策「たばこ価格」国別
http://ganseisaku.net/gap/data/gan/nations/price/nations/

■たばこ対策「たばこ税率」国別
http://ganseisaku.net/gap/data/gan/nations/tax/nations/

■たばこ対策「たばこ喫煙率」国別
http://ganseisaku.net/gap/data/gan/nations/smoking/nations/

更新日:2010年09月22日

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